学校教育の一環である部活動で、将来ある高校生が自らの命を絶つまで追い詰められていた。本人の絶望と遺族の無念さを思うと、やりきれなさと怒りがこみ上げてくる。

 県立高校で運動部の主将を務めていた2年生の男子生徒が、自殺していたことが分かった。

 部の顧問の男性教諭による日常的な厳しい叱(しっ)責(せき)が原因だった可能性が高い。「キャプテンやめろ」「部活やめろ」といった威圧的な言葉のほか「使えない」「カス」などの暴言もあったという。

 校長と顧問は遺族を訪ね「指導が間違っていた」と謝罪した。では、顧問と生徒との間で何があったのか、明らかにする必要がある。

 生徒は小学1年から競技を始め全国大会に出場した経験もある。高校には、子どもの頃から知っていた顧問の誘いを受け推薦入学した。生徒にとって顧問が絶対的存在だったことは想像に難くない。

 入学後、顧問の対応は厳しくなり、大会で成績が振るわないと心ない言葉を掛けられたという。母親に「どうやったら怒られないか」と相談したこともあった。死の前日も後輩の前で叱責された。

 楽しくてのめり込んでいた競技が苦しみになる。果たしてこれが「指導」と言えるのか。見えてきたのは勝利至上主義の行き過ぎた部活動指導のありようだ。

 個人の尊厳はないがしろにされ絶対服従を強いられる。そこには生徒の主体性を尊重して成長を促す、教育的な姿勢が感じられない。

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 部活動の指導を巡っては、2012年に大阪市立高バスケットボール部主将の男子生徒が顧問から体罰や暴言を受けて自殺し、社会問題化した。

 文部科学省は学校の運動部活動の指導について指針をまとめた。勝利至上主義を否定し、体罰やパワハラ、特定の子どもに過度な肉体的・精神的負荷を与える行為は認められないとする内容だ。

 顧問の態度が指針に反するのは疑いようもない。

 気になるのは、高校側がこの問題を把握して止めることができなかったか、である。

 県教育委員会は、生徒が所属していた部には副顧問もいたが「校外などへの引率程度で、日頃の指導にはノータッチ」と説明する。だとしても顧問の不適切な言動を知らなかった、とは考えにくい。

 教員相互や管理職による健全なチェック体制が機能していたか検証する必要がある。

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 バレーボール女子元日本代表の益子直美さんは、学生時代に監督の暴言で萎縮した体験からパワハラ指導を否定する。与えられた厳しさではなく、自分で目標を立てチャレンジすることで成長できる、という指摘はもっともだ。

 県教委は弁護士らによる第三者チームを立ち上げた。原因解明とともに再発防止策を探り具体的に示してほしい。特定の学校、特定の部だけの問題ではないからだ。

 過度の厳しさを「熱心な指導」と捉えがちな風潮は部活動で今も残る。体罰や暴言によらない指導技術こそ磨くべきである。