生活保護費の引き下げを巡り、大阪地裁が初めて「違法」との判断を示した。決定に「裁量権の逸脱や乱用があった」とし、引き下げ処分を取り消したのだ。

 生活保護は国民の生命と暮らしを守る「最後のセーフティーネット」である。国は判決を重く受け止め、是正措置を講じなければならない。

 2013~15年の生活保護費の基準額引き下げは生存権を保障した憲法25条に反するとして、大阪府内の受給者が国と自治体に減額取り消しなどを求めていた訴訟だ。沖縄を含む全国各地で同様の裁判が起こされている。

 訴訟の争点は、手続きにおける厚生労働相の裁量権や引き下げ方法の妥当性である。

 判決は、引き下げにあたり、原油や穀物の高騰で特異な物価上昇があった08年を起点としていたことや、消費者物価指数でなく厚労省が独自に算定した指数を使用したことなどを問題視した。

 物価が上昇した後の下落率が大きくなるのは当然だ。厚労省の指数は受給者世帯で支出割合が低いパソコンなど教養娯楽用品を基にしたため下落率がより大きくなったとみられ、実態を反映していない。

 裁判所が「判断の過程や手続きに過誤や欠落があった」と断じたのは、裏付けとなる統計を欠くなど信頼性や透明性が担保されていないからである。国のやり方はずさんで不合理と言っているのに等しい。

 いったん減額前の支給に戻した上で、保護基準の見直しを求めたい。

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 生活保護基準の引き下げは12年の衆院選で当時野党だった自民党が掲げた公約の一つだ。保護費に切り込む姿勢を鮮明にし、民主党との違いを際立たせた。

 背景にあったのは、人気お笑いタレントの母親が生活保護を受けていたことをきっかけに相次いだ「不正受給」問題など、制度への不信の高まりである。

 政権復帰の翌年、安倍政権は、引き下げを実施に移す。切り下げられたのは、生活保護費のうち食費など日常生活にかかる「生活扶助」で、15年度までの3年間で平均6・5%、最大10%に及んだ。

 ただ当時から「初めに引き下げありき」で、その根拠の薄さが指摘されていた。

 「自助」を強調する自民党の方針、受給者への批判や偏見の高まりが、厚労相の判断や手続きに影響したことは否めない。

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 新型コロナウイルス感染拡大の影響で困窮し、公的支援を必要とする人が急増している。これまで貧困とは無縁だった働き盛り世代からも「新たな貧困」が生まれている。

 だが受給者への厳しい視線は、本当に困っている人が受けられない「漏給」を増やしている。

 健康で文化的な最低限度の生活をどのように実現していくか。

 昨年末、田村憲久厚労相は「生活保護を受けることは国民の権利だ」と異例の呼び掛けを行った。権利としてセーフティーネットを提供する責任が政府にある。