沖縄県那覇市管理の松山公園にある儒教施設の久米至聖廟(くめしせいびょう)(孔子廟)に市が土地を無償提供しているのは憲法の定める政教分離に違反するかが問われた住民訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・大谷直人長官)は24日、無償提供は違憲と認定した。土地使用料は減額できるとした二審判決を一部破棄し、市に全額請求するよう求めた。住民側の完全勝訴となり、政教分離に違反した市の説明責任が問われる。

那覇市の松山公園内にある孔子廟(久米至聖廟)=24日午後、同市久米

判決骨子

那覇市の松山公園内にある孔子廟(久米至聖廟)=24日午後、同市久米 判決骨子

 政教分離を巡る最高裁の違憲判断は、愛媛県が神社に玉串料を支払った1997年の「愛媛玉串料訴訟」、北海道砂川市が神社に市有地を無償提供した2010年の「空知太(そらちぶと)神社訴訟」に続き3例目。住民側は久米至聖廟の撤去や土地の明け渡しなどを求める別訴訟も那覇地裁に起こしており、今後の審理に影響を与える可能性もある。

 判決では、同施設の観光資源としての意義や歴史的価値をもって無償提供する合理性はないと指摘。「市が特定の宗教に対して特別の便益を提供し、援助していると評価されてもやむを得ない」と判断した。年約570万円の使用料相当額を免除された久米崇聖会の利益は「相当に大きい」とした。

 裁判官15人のうち14人の多数意見。1人は同施設について「宗教性がないか希薄化している」とし、違憲判断は「政教分離規定を曖昧な形で過度に拡張するもの」と反対意見を述べた。

 判決を受け、原告で「住みよい那覇市をつくる会」の金城テル代表(92)は那覇市内で会見し「市は判決を受け止め、政教分離の問題を解決してほしい」と要望。那覇市の城間幹子市長は「判決内容を精査し、改善点を検討したい」と述べるにとどめた。

 一審那覇地裁は18年4月、政教分離に反して違憲と認定、市は全額徴収する義務があるとしたが、二審福岡高裁那覇支部は使用料は市の裁量で減額できると変更していた。

[ことば]孔子廟(こうしびょう) 中国・春秋時代の思想家で、儒教の祖となった孔子を祭る建物。孔子の死後、山東省・曲阜にあった旧居を廟に改築したのが始まりで、中国各地やアジアに広がった。曲阜の孔子廟は、孔子の墓所などと共に世界文化遺産に登録されている。日本では古代から教育機関に設けられ、江戸時代に儒教から発展した「朱子学」が幕府公認の官学になってからは、各地の藩校にも数多く建設された。