儒教の祖、孔子を祭る久米至聖廟(くめしせいびょう)(孔子廟)のために、那覇市が公園の土地を無償提供したことが、憲法の「政教分離の原則」に違反するか否かが問われた住民訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・大谷直人長官)は違憲と判断した。

 政教分離を巡る最高裁の違憲判決は、愛媛県が神社に玉串料を支払った1997年の「愛媛玉串料訴訟」、北海道砂川市が神社に市有地を無償提供した2010年の「空知太神社訴訟」に続き3例目。孔子廟に関する判断は初めてである。

 最高裁は今回、空知太神社訴訟の「施設の性格や土地提供の経緯、態様のほか、一般人の評価などを考慮して総合的に判断する」との枠組みを踏襲した。

 孔子の生誕の日とされる9月28日に行われる「釋(せき)奠(てん)祭(さい)禮(れい)」が、孔子を顕彰するにとどまらず、その霊の存在を前提としてあがめ奉るという宗教的意義を持つ儀式と指摘。孔子廟が明治時代以降、社寺と同様の扱いを受け、今も宗教性を引き継いでいるとし「一般人から見て、市が特定の宗教を援助していると評価されてもやむを得ない」と判断した。

 かつて国家神道を精神的支柱にして戦争への道を突き進んだ。政教分離の原則は、多大な犠牲をもたらした戦前の深い反省に立脚し、つくられたのだ。公有地の無償提供という自治体の行為が、司法の場で憲法の禁じる「宗教的活動」と認定された意味は重い。那覇市は違憲状態の解消に努めるべきだ。

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 判決は、儒教が「学問」か「宗教」か、という核心部分について言及を避けた。あくまで、久米至聖廟の施設外観や年1回の祭礼のありようなどに関して宗教性を認め、「その程度も軽微とはいえない」と結論付けた。

 一方、公有地の使用料免除について「仮に宗教性のある施設でも、歴史的価値や観光資源、地域の親睦の場としての意義があれば、無償提供することがあり得る」との考えも示している。

 那覇市は施設の観光資源としての意義に着目し、歴史的価値が認められるとして使用料を免除した経緯がある。裁判の中で、孔子廟の歴史・文化を伝える場でもあると主張したのもそのためだ。

 判決は、現在の久米至聖廟がかつての建物を復元したものとはうかがわれず、法令上の文化財として扱われていないなどとし、市の主張を退けた。自治体による便宜供与に慎重さを求めたと言える。

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 裁判官15人のうち、林景一裁判官が唯一、反対意見を付けた。久米至聖廟を巡る活動は、久米三十六姓の子孫として祖先をしのび、集団の絆を強めるものと評価した。「信仰に基づく宗教行為というより、代々受け継がれた伝統や習俗の継承であり、宗教性が残っていたとしても希薄である」との認識を示したのだ。

 かつて、中国からの渡来人が琉球王国の繁栄を支え、今なお歴史的・文化的影響が色濃く残る沖縄にとって、培われた伝統やならわしをどのように継承していくか、判決とは別に考える必要がある。