接待を巡る官僚の不祥事が後を絶たない。霞が関のモラル低下は深刻だ。

 菅義偉首相の長男が勤める放送事業会社から接待を受けていた総務省官僚11人が24日、処分された。「利害関係者からの接待」などを禁じる国家公務員倫理規程の違反であり、行政の公正性への信頼を揺るがすもので当然だ。

 ただ、総務審議官当時に1回で7万円超の接待を受けていた山田真貴子内閣広報官は、厳重注意にとどまった。給与の一部を自主返納するという。

 衆院予算委員会で参考人として出席した山田氏は「公務員の信用を損なうことになり、深く反省している」と謝罪した。だが、信頼回復に努める責任があるとして、辞任は否定した。

 利害関係者からの接待を受けたことには「チェックが行き届かなかった」、長男との関係について詳細は「覚えていない」などと曖昧に答えた。広報官として国民に説明する立場にもかかわらず、責任を果たせていない。

 そもそも、長男が勤める放送事業会社がなぜ接待を繰り返したのか、許認可を巡る便宜供与はなかったのかなど問題の背景、核心部分は明らかになっていない。

 総務省の調査では、山田氏を含め計13人が、2016年7月から20年12月にかけて、延べ39件の接待を受けた。

 「利害関係者」との接待で、放送行政がゆがめられた疑念は深まるばかりだ。減給などの処分による幕引きは許されない。

 独立性を持った第三者機関による調査を政権の責任で早急に行うべきだ。

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 農林水産省も、鶏卵を巡る贈収賄事件で在宅起訴された鶏卵生産大手グループの元代表から会食の接待を受けたとして25日、事務次官ら計6人を減給処分などにした。これも利害関係者の負担による会食が倫理規程に違反していると判断された。

 相次ぐ官僚の接待不祥事は、国家公務員の倫理規程がもはや形骸化していることの表れである。行政への信頼低下は深刻で、菅政権はこの事態を重く受け止める必要がある。

 不祥事の背景には、安倍晋三前政権時の森友学園や加計学園、桜を見る会などを巡る問題で浮かび上がった政権への「忖度(そんたく)」や、身内への甘さといった構図がある。負の「遺産」を菅政権も受け継いでしまったのか。減給という処分の甘さも指摘されており、国民の理解は得られまい。

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 菅首相は当初、長男を「完全に別人格」と強調していた。官僚の処分が出たことでようやく「長男が関係して、結果として公務員が倫理規程に違反する行為をしたことは心からおわび申し上げる」と陳謝した。

 首相には放送行政への疑念を招いた責任がある。国民の信頼を回復するには、謝罪するだけでなく、先頭に立って接待問題の全容を解明し、徹底検証して説明しなければならない。

 そのためにも、首相は野党が求める長男の国会招致に応じるべきだ。