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沖縄で観光客と住民が避難場所や物資を奪い合う…最悪のシナリオを避ける対策とは?

2021年3月2日 07:30

[沖縄の防災・共に考える](6)備えてますか ※この記事は2014年06月11日に沖縄タイムス紙面に掲載されました。人物の年齢や説明の内容は掲載当時のものです。

 夏の観光シーズンが近づいている。沖縄は多くの観光客と住民が混在する島。災害が起きたとき、両者が避難場所や物資を争う事態は避けなければならない。先駆けて避難、誘導対策を進めるビーチやアーケード街を紹介する。備えに取り組めば取り組むほど、課題もまた見えてくる。

ホテルと地元 情報共有
ビーチ 旗掲げ避難呼び掛ける

海にいる客に津波からの避難を呼び掛けるため、赤旗を掲げてジェットスキーで沖 へ出るスタッフ(訓練)=名護市喜瀬・かりゆしビーチ

 名護市のかりゆしビーチは津波発生の一報が届くと赤旗を掲げたジェットスキーを沖へ走らせ、海にいる客に避難を呼び掛ける。ピーク時の海水浴客は500人前後。スタッフは中継機能のある無線機を使い全員で誘導、救護する。普段閉めている門を開け、高台のサッカー場へ歩いて導く。

 東日本大震災後、年2回続けてきた消防訓練で大津波を想定し、内容や設備を拡充。マニュアルも作り随時見直している。防災組織隊長の上間信作さん(46)は「お客様に安全に安心して帰宅していただくために何をすべきかに尽きる。各ホテルが持つ復旧用設備を災害時に連携して使えれば、効率が高まるのでは」と話す。

 ホテル副総支配人の多良間剛さん(41)によると、以前から地元の恩納村名嘉真区と災害時に高台のホテルに住民を受け入れる協定を結んでいる。現在の区公民館が低地にあるためだ。震災後は区長と毎月協議し、1人暮らしのお年寄りら要支援者の情報共有を進めている。

 名護市内にビーチとホテルを併せ持つザ・ブセナテラス。敷地が広く滞在客は最大約千人に上るため、木や植栽に多くのスピーカーを設けた。災害時などにしっかり情報を伝えるためだ。

 津波避難時は、まず客を高台の駐車場へ誘導。津波の収束後、ビーチの桟橋から船で逃がす。陸路が復旧した場合は国道58号を南へ渡って山手に避難させる。

 2010年の防災訓練から、低地に駐車するブルドーザーや散水車も高台に移している。道の復旧に必要で、停電時には電源車として使えるからだ。敷地内を巡るバスは応急の救護施設やベッドとして利用する。

敷地内を巡るバスの車内。災害時には応急の救護施設やベッドとして使える=名護 市喜瀬、ザ・ブセナテラス

 防災業務リーダーの金城圭悟さん(39)は「避難経路看板を生かした誘導やストレッチャーがないときのけが人搬送など、訓練の熟度をさらに上げたい」と話す。地元の名護市喜瀬区とは2度、一緒に訓練をした。海沿いにあり、高齢化も進む同区から「防災訓練の仕方を教えてほしい」と相談を受けたのがきっかけだ。

 かりゆし、ブセナテラスの両社は、訓練を重ねる中で、外国人客への対応や物資の備蓄など、新たな課題を見いだした。最大の心配は国道58号が寸断され、人と物の往来ができなくなることだ。かりゆしはサッカー場やホテルに車が殺到する事態、ブセナテラスは自力で避難路を切り開く事態を想定している。備えは終わらない。(新里健)

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