ミャンマーで国軍による軍事クーデターが発生して1カ月が過ぎた。

 市民の不服従運動や平和的な抗議デモに対する治安当局の銃撃を含むむき出しの暴力が後をたたない。事態は悪化する一方だ。

 国連人権高等弁務官事務所によると、2月28日の抗議デモの際、治安当局の銃撃で少なくとも18人が死亡、30人以上が負傷した。

 死傷者の数は日を追うごとに増えている。

 与党の国民民主連盟(NLD)を率いるアウン・サン・スー・チー氏は、国軍によって拘束され、違法に無線機を輸入したとして輸出入法違反の罪などで訴追された。

 新たに、社会の恐怖や不安をあおる情報を流布した容疑でも訴追された。拘束期間を引き延ばす狙いがあるとみられる。

 ミャンマーの国軍は、長期にわたって政治に関与し続け、その間に憲法上の特権的地位や経済的利権を築き上げてきた。

 クーデターの背景にあるのは、昨年11月の総選挙でスー・チー氏率いる与党が圧勝し、国軍の既得権が脅かされてきたことだ。

 「法の支配」「人権」という国際社会共通の価値が、総選挙に敗れた国軍の言い分によって、踏みにじられようとしているのである。

 無差別発砲による流血の惨事が起これば、これまで積み上げてきた民主化と経済立て直しの成果は、いっぺんに吹き飛ぶ。国際社会はあらゆる手を尽くして国軍の自制を促してもらいたい。

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 国軍にとって誤算だったのは、抗議の広がりである。

 ミャンマー国連大使のチョー・モー・トゥン氏は、国連総会の非公式会合で「国軍の戦争犯罪や人道に対する罪を容認すべきではない」と国軍を公然と非難し、独裁への抵抗を示す3本指を掲げた。

 他国の代表からは「勇気ある発言」などと称賛の声が相次いだ。

 市民の抗議運動も素早かった。若者を中心に、さまざまな集団が自発的に抗議行動に参加し、職業や世代を超えた連携を実現した。

 会員制交流サイト(SNS)を駆使したことで、抗議行動が瞬く間に全国規模に拡大し、国際社会の支援の輪も一気に広がった。

 民主化によって勝ち取った成果が社会の中で根付きつつあることを物語る。

 だが、国内の運動だけでは、軍隊を背景にした治安当局の弾圧をはねのけるのは難しい。

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 国連や米中二大国、東南アジア諸国連合(ASEAN)、日本など、国際社会の説得と圧力が何より重要だ。

 米中対立が深刻化しつつある中で、どこまで共同歩調をとることができるか。

 日本の役割も重要だ。在ミャンマー日本大使館の丸山市郎大使は、スー・チー氏と国軍双方にパイプを持ち、地元からの評価が高いという。

 治安当局の暴力によって市民の中からこれ以上死傷者が出ないよう、単なる声明発表だけではない行動を政府に期待したい。