沖縄県宮古島市の池間島の住民に親しまれてきたマッチャ(雑貨店)の「川上商店」が2月11日に閉店し、55年の歴史に幕を下ろした。店主の川上慶子さん(85)は「泣き笑いの人生行路を無我夢中でやってきた。生き抜く力を与えてくれた商店。長い間支えてくれた島の人に感謝したい」と話した。島の女性たちの情報交換の場としても重宝されるなど地域に愛された。最終日には住民らが相次いで訪れ、閉店を惜しんだ。

地域の女性と雑談する川上慶子さん(右端)=2020年6月、宮古島市平良池間

 川上商店は池間大橋が開通する前の1965年に開店し、屋号「アガンミ」のマッチャとして親しまれてきた。開業のきっかけは、宮古島の狩俣と池間島をつなぐ定期船「黄金丸(こがねまる)」の船員をしていた夫が病で急死したことだった。

 長女の梢(こずえ)さんが4歳、長男の寛(ひろむ)さん3歳、慶子さんが30歳の時。「夫を亡くしてからはお先真っ暗。絶望的な毎日でいつも泣いていた」と振り返る。2人の幼子を抱えながら生活のためにと心機一転。開店を決意した。

 橋の開通前は、連絡船で平良の市街地まで出掛けて米や卵などの日用品を仕入れた。開通後は車の免許を取り、島での営業を続けてきた。

 宮古島に県内外の大型スーパーが相次いで進出したこともあり、島にあったほかのマッチャは姿を消した。それでも慶子さんは「黄金丸」の船長も務めていた兄の毅(つよし)さんに仕入れの手伝いをしてもらいながら店を切り盛りしてきた。長年営業を続けたが、年齢なども考慮し店を閉じることにした。

 最終日には、住民らが次々と訪れ慶子さんの長年の労をねぎらった。夫婦で訪れた仲原良修(よしのぶ)さん(38)は「物心がついたころから慶子さんにかわいがってもらってきた。地域の交流の場がなくなるのは寂しい」と名残惜しそう。島出身で市街地に住む儀間利津子さん(68)は「子どものころは1セントを握りしめてくじ付きの甘納豆やお菓子を買っていた。マッチャがなくなるのは切ない」と話した。