社説

社説[内定取り消し]多様な採用で雇用守れ

2021年3月7日 07:03

 新型コロナウイルスが学生の就職活動を直撃している。

 動画求人サイトを運営する「プロアライアンス」と学生団体「CEO」が今春、来春卒業予定の県内大学・専門学校生を対象にした調査で、12人が、新型コロナの影響で「内定が取り消しになった」と回答した。

 春から社会人になる予定だった、働く意欲のある12人の若者が、就職先を失ったことになる。

 安易な内定取り消しや過度の採用抑制になっていないか、検証する必要がある。

 新型コロナで就職活動は様変わりしている。

 979人が回答した調査では、延べ約600人が合同企業説明会や企業訪問、就職セミナーが中止になったと答えた。

 従来の対面からウェブに代わり、「情報収集が難しくなった」と感じた学生も約250人いた。

 雇用情勢にも変化が見られる。

 リクルートワークス研究所が昨年12月に発表した調査結果では、前年より採用を減らす企業が11・6%に上った。採用増を上回ったのはリーマンショックの影響を受けた2011年卒業生以来、11年ぶり。

 コロナ以前の「売り手市場」が「買い手市場」に転じている。

 コロナによる長期休校で学びの機会を制限され、さらに就職活動でも苦労を強いられる学生のサポートが必要だ。

■    ■

 懸念されるのが「就職氷河期」の再来だ。

 1990年代初頭のバブル崩壊後、景気後退による企業の新卒の採用抑制で、就職できなかったり、正社員になれず、非正規で働かざるをえない人が続出した。

 30代半ばから40代半になった「就職氷河期世代」がこのまま高齢化すると、生活保護など社会保障費が増大しかねないと、政府は支援に重い腰を上げた。

 同じ轍(てつ)を踏まないよう、今のうちに手を打つ必要がある。

 日本の多くの企業が卒業予定の学生をまとめて選考し、卒業と同時に採用する「新卒一括採用」を実施する。

 これに乗り遅れたら、正社員になりにくく、非正規となって、安定した仕事を得にくくなる傾向がある。

 こうした日本特有の「横並び」の採用形態も、見直す時期に来ている。

■    ■

 欧米では就職前にボランティア活動などで経験を積む「ギャップイヤー」が定着している。就活でも経験が評価され、回り道が不利にならない。

 社会は多様化しており、企業側も、多様な価値観を持った人材を求めているはず。

 新卒偏重に陥らず、通年採用など、採用形態を広げるべきだ。

 自由な採用が広がれば、学生も、もっとのびのびと就職活動ができるだろう。

 新型コロナをきっかけに在宅勤務など働き方の選択肢も広がっている。

 「多様性」がアフターコロナの雇用を守る鍵になる。

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