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決勝直前にコロナ陽性 夢砕かれた沖縄のプロボクサー 絶望のまま直面した東京の医療逼迫

2021年3月9日 05:00有料

プロボクサー福永輝(22)北谷町出身

 「ここまで来たのに何で…」。北谷町出身のプロボクサー、福永輝(22)=沖縄ワールドリング=は2月、全日本新人王決勝戦直前に新型コロナウイルス陽性と判定され、棄権せざるを得なかった。絶望のまま直面したのは、逼迫(ひっぱく)した東京の医療体制。幸い無症状で10日間の隔離を終えて沖縄に戻ったが、「もう一度世界中のみんなで真剣に対策し、コロナをなくさないとだめだ」と心の底から訴える。(磯野直)

 福永は2019年度新人王決定トーナメントのフェザー級にエントリーし、3連続KOで勝ち進んだが西軍代表決定戦で前田稔輝(グリーンツダ)に敗れた。「どうしても新人王になりたい」と20年度新人王の出場を決めたが、今度はコロナ禍で4月開始のトーナメントは延期に。どうにか9月に無観客で始まり、福永は4連続勝利で西軍王者になって全日本決勝へ進んだ。2年越しの夢の実現が目前に迫っていた。

 2月21日の後楽園ホールでの決勝戦を前に中真光石会長と19日に上京し、日本ボクシングコミッション(JBC)が義務付けるPCR検査を受けた。ホテルに直行し翌日の計量に備えて休んでいると夕方、中真会長から電話が。「陽性反応が出たらしい。体調は大丈夫か」。頭の中が真っ白になった。

 「あす、JBCの再検査があるから安静にして。部屋から出ないように」と言われたが、どうすればいいか分からない。減量中で食事ができず、味覚異常があるかも確かめられなかった。

 本来なら減量の仕上げと戦う気持ちを整えなければならない夜なのに、やり場のない感情をコントロールできない。涙が止まらず一睡もできず、つくり上げた最高のコンディションは一夜でぼろぼろ。こんな状態で試合はできないと翌朝、中真会長に棄権を申し入れた。

 20日は部屋に滞在できたが連泊は断られ、21日にホテルを出された。隔離療養のための宿泊施設が満杯で行き先が決まらず、陰性だった中真会長らとホテル前の路上で4時間近く、保健所からの連絡を待った。寒さがこたえたが屋内には入れない。保健所に問い合わせても「重症者が優先」と取り合ってもらえない。緊急事態宣言下で医療体制が窮迫する、東京の現実だった。...

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