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「諦めなかった10年」福島から夢へ一歩 沖縄料理店を営む一家 長女は沖縄の専門学校へ

2021年3月11日 10:25

[10年東日本大震災 ー沖縄と、被災地とー]

震災から10年の岩立さん一家。左から岩立あみ子さん、あかりさん、母親の文子さん、祖母のケイ子さん、文哉さん。子どもたちはそれぞれの夢に向かって進んでいる=2月25日、福島県いわき市常磐湯本町

 【福島】東日本大震災、東京電力福島第1原発事故から10年。本紙はこの間、いわき市にある沖縄料理店「A家食堂」を営む岩立文子さん(49)一家の取材を続けてきた。店のコンセプトは「イチャリバチョーデー」。今年も岩立さん一家を訪ね、一歩一歩進んできた家族の希望を見詰めた。(東京報道部・吉川毅)

 店は温泉街として知られるいわき市常磐湯本町にある。1300年以上も前から愛されてきた由緒ある温泉街だが、原発事故後は訪れる人が減った。2008年に開店し、軌道に乗り始めていた店も経営的に厳しくなり、健康被害の不安などから店を閉めることを考えた時もあった。

 今も安心して暮らせているわけではない。余震や原発の不安は続く。新型コロナウイルスの影響で、時短営業や休業を余儀なくされることもある。17年には第1原発構内で車両整備士だった義兄が亡くなった。過酷な労働環境や安全体制に不備があったとして遺族が東電などを訴えた裁判で、原告の姉をサポートする。

 「あっという間の10年。店に訪れる人たちや地域とのつながり、そして家族がいてくれたから、諦めなかった」と振り返る。

 岩立さんは20代の頃、「ヌチグスイ」という言葉のある沖縄料理を学びたいと那覇市内の調理師学校に通い、老舗「美榮」で修業。ふるさと福島で沖縄料理店を開く夢をかなえた。

 長女のあみ子さん(18)もヘアメークアーティストを目指し、4月から沖縄の美容専門学校に通う。「母から沖縄の人の温かさを聞いてきた。全国、海外からも多くの人が集まる場所で夢を実現したい。沖縄の文化や自然の中で生活することは刺激になると思った」

 沖縄は家族で何度も旅行した。おととし10月にあった修学旅行では、首里城の正殿などが火災で焼失する前に訪れていた。スマートフォンには、首里城で撮影した友人との集合写真と家族の写真が入っている。「家族とも友達とも離れることになるけど寂しくはない。みんなの応援があるし大丈夫」と笑顔で話した。

 震災当時5歳で長男の文哉さん(15)は4月から工業系の高校に進む。「将来は金属加工の仕事をしたい。コロナも大変だけど、家族のために頑張る母を尊敬している。僕も目標を持って頑張りたい」と意気込む。

 震災翌月に生まれた次女あかりさん(9)は現在、タヒチアンダンスに夢中。昨年は同世代の部門で全国3位になった。ひょうきんで活発で友達も多く、家族のムードメーカーでもある。

 文子さんは「子どもたちは夢や目標を持ってどんどん進んでほしい。自分を大切に悔いのないように、私にはできないことをたくさんやってほしい」と話した。

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