総務省幹部への高額接待を繰り返していた放送事業会社「東北新社」が、衛星放送事業の一部の認定を取り消される見通しとなった。放送法で定める外資規制への違反が明らかになったためだ。

 違法であれば取り消しは当然である。ただ、それで幕引きにしてはならない。

 衛星放送事業の取り消しは過去に1件しかない。異例の事態だ。あり得ない違反見逃しがなぜ起きたのか。チェック機能がなぜ働かなかったのか。菅義偉首相の長男らによる一連の接待との関連を含め、徹底的な調査が必要だ。

 放送法は外資による支配を防ぐ目的で、基幹放送事業者に対し外資の比率を20%未満に制限している。

 ところが東北新社は外資比率が20%を超えていたにもかかわらず2017年1月、BS放送「ザ・シネマ4K」の認定を受けた。その後、子会社への承継も認められた。

 この問題は、5日の参院予算委員会で立憲民主党の議員の指摘で明らかになり、武田良太総務相は12日、認定の手続きに「重大な瑕(か)疵(し)」があったと認めた。

 総務省によると、担当者が有価証券報告書などの公開資料で外資比率を確認せず、報告書と齟(そ)齬(ご)のある申請書類でそのまま認定したという。

 本当に確認不足なのか。識者は「外資比率は重要な項目で、見逃すことはあり得ない」と指摘する。

 もし違反を見抜けなかったとすれば許認可権を持つ行政としてあまりにもずさんだ。放置した側の責任も厳しく問われなければならない。

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 総務省はいつの時点で問題を把握していたのか。

 12日の参院予算委では、東北新社が事業を子会社に引き継ぐ前の時点で、規制に抵触する可能性があると認識し、総務省に伝えていたと説明していることが分かった。一方で総務省の担当者は「報告を受けた覚えはない」とし、主張が食い違っている。

 週明けには東北新社の社長の参考人招致が予定されている。納得できる説明を求めたい。

 東北新社による総務省への接待問題では、計13人が延べ39件の接待を受けていたことが分かっている。

 「ザ・シネマ4K」を子会社に移す手続きを最終的に決裁したのは、そのうちの1人、山田真貴子前内閣広報官。当時は情報流通行政局長だった。

 事業者と官僚の「近すぎる関係」は認定と関わりがあるのか、放送行政がゆがめられた事実はないのか、疑念は深まるばかりだ。

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 総務省を巡っては幹部がNTTからも高額接待を受けていたことが分かった。

 さらに野田聖子自民党幹事長代行ら総務相経験者らとNTT側との会食も明らかになった。

 武田総務相は「疑惑を招く会食に応じたことはない」と繰り返すもののNTTとの会食の有無は答えず、国民の不信を招いている。

 問題は根深く、底なし沼の様相を見せる。総務相を経験し、今も省内に影響力を持つ菅首相の責任も問われている。