業者による接待攻勢によって、行政が歪(ゆが)められることはなかったのか-疑惑は深まるばかりである。

 総務省幹部らが放送事業会社「東北新社」やNTTから高額な接待を受けていた問題で、参院予算委員会は、東北新社の中島信也社長とNTTの澤田純社長の出席を求め、集中審議した。

 放送法に基づく外資比率規制に違反していたにもかかわらず、総務省はなぜ、東北新社の申請通りBSの洋画専門チャンネル「ザ・シネマ4K」の衛星放送事業を認定したのか。

 申請した側の中島社長は「認識不足による単純な計算ミス」と謝罪し、審査した側の武田良太総務相は「審査が十分でなかった」ことを認めた。

 申請の段階で業者があり得ないミスを犯し、調べれば分かることを調べもせずに総務省がOKを出したというのである。

 放送行政とは、これほどいいかげんだったのか。信じられないような話だ。

 東北新社に勤める菅義偉首相の長男が複数回、接待に同席したことで官僚が「忖度(そんたく)」し、結果として行政が歪められたのではないか、という疑念が生じるのは当然である。

 中島社長によると、東北新社は事業の認定を受けたあと規制違反に気付き、その旨を総務省の課長に伝えた。

 ところが、総務省の担当者は「報告を受けた覚えはない」と真っ向から否定している。これほど重大な問題であるにもかかわらず、関連文書も残っていないという。

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 NTT側は総務省幹部のほか、総務相経験者や副大臣経験者とも会食した。

 澤田社長は業務上の働き掛けは否定したが、倫理規定に対する認識不足を陳謝した。

 総務省の大臣・副大臣経験者や現職幹部が、東北新社やNTTから高額接待を受けていたことは、国家公務員倫理法に基づく倫理規程や、「国務大臣、副大臣及び大臣政務官規範」に違反する疑いが濃厚だ。

 倫理観や規範意識の欠如は、職務の公正性に対する信頼を傷つける。

 武田総務相は、東北新社やNTTからの接待について、この日の国会でも、「個別の案件」という理由で、答弁を拒否した。

 「会食をしたことがあるか」と何度質問しても答弁を拒否し、答弁拒否の理由も明らかにしないまま「国民が疑念を抱くような会食に応じたことはない」と一方的に答えるだけ。国会軽視の姿勢は目に余る。

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 総務省は、外部の有識者による検証委員会を設置する考えだが、委員会にゲタを預ける手法には注意が必要だ。

 まずは国会が国政調査権を行使し、当時、この問題にかかわった山田真貴子・元総務審議官や、菅首相の長男正剛氏ら関係者を証人喚問し、真相究明を徹底すべきである。

 菅首相は、再発防止と信頼回復に努めなければならない立場にあるが、国会答弁では、その意欲も問題の重大性に対する認識も、まったく伝わってこなかった。