年金の「振替加算」の対象であるにもかかわらず、1998年から加算分が支給されていなかった沖縄県豊見城市内の女性(87)に対し、那覇年金事務所が時効と判断した2015年までの17年間の未払い分約300万円を支給していたことが17日、分かった。同事務所は女性に「時効分の請求には裁判所に訴える必要がある」と伝えていたが、女性は訴訟を提起していない。支援した仲山忠克弁護士によると、提訴せずに全額支給されたのは県内初。全国3例目だという。

年金の振替加算の支給について説明する仲山忠克弁護士(右端)と瀬長美佐雄県議(左端)ら=17日県庁

 仲山弁護士は「裁判を起こす必要があるという言い方は、未払い分の支給を抑制する狙いがあると受け止められる」と批判。「周知不足が原因で、国に責任がある」と指摘した。本紙の取材に、那覇年金事務所は「本部に問い合わせてほしい」と回答。日本年金機構は「現在は相談を受ければ個別の事情に応じて丁寧に対応している」と答え、現状では裁判に訴える必要があるという考えを否定した。

 振替加算は1991年に導入され、公的年金の加入者の配偶者が65歳以上から受け取る基礎年金に上乗せされる年金。国民年金が任意加入だった時期の専業主婦らの年金額を増やす狙いで、加入者と生計が同一、66年4月1日以前の生まれといった条件がある。厚生労働省は全国で約4万5千人が加入者と生計が同一だと申告しなかったとの理由で支給の対象でないとの見解を示し、改めて申告した場合、時効を適用し、過去5年分を支給するとしてきた。

 女性は瀬長美佐雄県議無料生活相談所に相談。昨年6月、遺族年金の手続きで訪れた那覇年金事務所で振替加算の漏れが発覚し、窓口で提訴を促された。

 仲山弁護士が同12月、厚労相の国会答弁などを根拠に「裁判を起こさず、窓口で対応する通達があるはずだ」と追及。事務所はそれを認め、住民票の提出など手続きを進めた結果、3月15日に日本年金機構から時効分が支払われたという。

 仲山弁護士は「通達が行き届いていないのは問題だが、裁判せずに受け取ることができると分かった。気になる点があれば相談してほしい」と話した。瀬長県議の相談所は、電話098(987)0773。