あまりに不誠実で国会を軽視した発言である。

 一連の総務省接待問題で、新たに武田良太総務相が国会で「記憶がないと言え」と幹部に指示した疑いが浮上している。

 放送事業会社「東北新社」の外資規制違反を巡る審議で、立憲民主党が映像分析から武田氏による答弁指示の疑いを指摘。幹部は指示を受けたとされる直後「記憶はございません」と答弁していた。

 武田氏は18日の衆院総務委員会で、発言は認めたものの答弁指示の意図は否定した。19日の参院予算委員会では「誤解を与えたのであれば申し訳ない」と謝罪している。だが、部下に対するこの発言が指示でないとしたらどのような意味か。国民に分かる説明を一切行っていない。

 接待問題に関する武田氏の不誠実な国会答弁はこれだけにとどまらない。

 NTTが総務相経験者ら政治家も接待していたことが明らかになり、国会で会食の有無をただされた武田氏は、会食を認める18日までの1週間「国民の疑念を招くような会食や会合に応じることはない」と繰り返し、回答を避けた。答弁拒否との野党抗議に自民党側も「同感だ」と言わざるを得ないほどだった。

 「文春オンライン」の報道を受け一転、昨年11月の会食を認めた後も「出席者から特定の許認可に関する要望、依頼を受けたことはない」と答弁。関係業者からの供応接待を禁じる大臣規範に抵触しないと主張した。ただし、抵触するかどうか判断するのは国民の側であって、規制を受ける側の政治家本人ではない。

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 大臣規範は2001年の省庁再編の際、「政治主導」の名の下に各省庁の役職に就く政治家が大幅に増えたことに伴い閣議決定された。関係業者との接触の際は「供応接待を受けること」で「国民の疑惑を招くような行為をしてはならない」と定める。

 一方で公務員倫理規程などと異なり費用負担や例外などの具体的な規定を欠き、罰則もない。政治家の良心に任されている部分が大きいのだ。岡田直樹官房副長官は18日の記者会見で「政治活動の一環として、企業の方々と意見交換するのはあり得る」と、会食した武田氏を擁護する姿勢を示した。

 ただ、意見交換に酒食が伴う必然性はないし、まっとうな政治活動であれば、武田氏のように報道後ようやく認める必要もないはずだ。一連の対応そのものが「国民の疑惑を招く」結果になっている。

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 この間の答弁を巡り、ツイッター上では「もう政府の国会答弁を誰も信用しないだろう」「疑念を招く会食そのもの」「虚偽答弁が当たり前になっている」などと非難する投稿が相次いでいる。

 総務省は今、菅義偉首相の長男が勤める東北新社やNTTによる官僚への接待という不祥事で揺れている。そのトップである武田氏がさらに不誠実な国会答弁を重ね、国民の不信と疑惑を増幅させた責任は極めて重い。収拾への指導力発揮どころか事態の悪化を招いた武田氏は、職を辞して政治責任を取るべきだ。