「高校の部活動、とりわけ部活動顧問との関係を中心としたストレスの可能性が高い」

 運動部主将だった県立高校2年の男子生徒が自ら命を絶ったことを受け、県教育委員会が設置した第三者調査チームは自殺の原因をこう結論付けた。

 発表された報告書(概要版)によると、顧問だった男性教諭は、生徒が主将になったころから叱(しっ)責(せき)が厳しくなった。「キャプテンを辞めろ」といった発言で精神的に負担を与えていた可能性を指摘する。

 顧問は生徒との連絡にLINE(ライン)を多用し、迅速な対応を求めていた。やりとりは夜中まで続くこともあり、生徒は帰宅した後もイヤホンを着け、連絡があったかどうか意識せざるを得なかったという。

 指導者と部員という絶対的な力関係が、部活中だけでなく、休息すべき帰宅後の時間にも持ち込まれていたのだ。

 生徒の携帯電話のLINEには、顧問からの荒い言葉遣いが残っていた。こうした状況が日常的に続けば、精神的な疲弊は避けられないだろう。LINEという閉じられた空間で夜中までやりとりを続けることも非常識だ。

 顧問が提出したLINEの履歴からは、精神的な負担を与える言葉がことごとく削除されていた。恐らく自分でも不適切だと感じたのだろうが事実の隠(いん)蔽(ぺい)ではないか。

 生徒が亡くなった今、その尊厳を守るには顧問が包み隠さず明かす必要があるのに、あまりにも不誠実だ。

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 報告書によると、この顧問は過去にも別の生徒に不適切な言動をしていたことも分かっている。

 顧問から授業中に不適切な言葉を受けた女子生徒が不登校になっていた。顧問から鼻に指を入れられたり、いきなり技を掛けられたりした、と女子部員から副顧問に相談が寄せられたこともあった。

 校長は顧問に注意したというが、報告書は「調査や十分な対応がなされた様子がない」と断じている。生徒のSOSに対する感度の鈍さに怒りを覚える。

 「しっかり対応すれば息子の死は防げたのかもしれない」と生徒の親が不信感を抱くのは当然だ。

 文部科学省の部活指導のガイドラインでは、顧問の教員だけに運営や指導を任せず、学校組織全体で考えるよう求めている。しかし実態は顧問が一人で指導を担い、学校は不適切な指導を把握できなかった。その責任は重い。

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 第三者チームの調査期間は2週間余り。報告書でも認めている通り十分な期間ではない。調査対象も遺族を除きわずか18人にとどまっている。

 なぜ顧問は生徒を過度に追い詰めたのか、学級担任ら他の教員は生徒にどう関わっていたのか、など不明な点は残る。県教委は調査を続け事実を明らかにしてもらいたい。

 報告書は、部活動の特別推薦入学者が提出する「活動継続確約書」が生徒を追い詰める要因になっていた、などの問題点を指摘する。制度の見直しといった改善策も示している。再発防止への一歩として着実な実行を求めたい。