お母さんと赤ちゃんを守るため、困難を抱えた妊婦さんとつながる、より積極的な働き掛けを求めたい。

 若年妊娠や望まない妊娠、経済的困窮や精神的問題などで、出産する前からサポートを必要とする「特定妊婦」が、この10年で約7倍に増えたことが厚生労働省の調査で分かった。

 2009年施行の改正児童福祉法は虐待予防などのため、特定妊婦支援を位置付けた。市町村ごとに設けられた「要保護児童対策地域協議会」に登録されると、保健師の家庭訪問など支援の対象になる仕組みだ。

 厚労省の調査によると、09年に登録された特定妊婦は994人。10年目の18年は7233人に上った。沖縄は30人だった。

 増加の要因とされるのは、特定妊婦への認識の広まりという。

 妊娠に悩む母親の相談に乗り、必要な情報を提供し、出産前から子育て期まで切れ目なく支えていくことは、安心して子どもを産み育てる環境整備にもつながる。

 とはいえ望まない妊娠では妊娠届も出さず、妊婦健診にも通わないなど、行政の支援から漏れるケースが少なくない。

 困難を抱えた人ほど社会との接点は薄くなりがちで、「全国7千人超」という数字を専門家は全体のごく一部とみている。

 どうしたら「助けて」と声を上げられるのか。厳しい状況に置かれた女性たちに届く支援が必要だ。

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 自宅で出産し遺棄したり、赤ちゃんの遺体が発見されるなど望まない妊娠を背景にした悲劇が繰り返されている。

 おととし11月、羽田空港のトイレで出産したばかりの女児を殺害し、公園に埋めたとして逮捕されたのは就職活動中の女子大生だった。

 決して許される行為ではないが、妊娠を誰にも告げられず、追い詰められたのだろう。

 厚労省の専門委員会が、18年度に児童虐待で犠牲になった子ども54人の事例を分析したところ、その4割が0歳児だった。予期しない妊娠、妊婦健診未受診が、それぞれ2割を超えていた。

 赤ちゃんの虐待死といった痛ましい事件をなくすため、妊娠期からの取り組みの必要性が高まっている。

 ただ特定妊婦の定義は明確でなく、取り組みには地域差がある。課題とされるのは、リスク評価の方法や関係機関との連携だ。

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 新型コロナウイルスの感染拡大で孤立と困窮を深めている女性が多いことも懸念される。

 自粛生活の影響なのか、若年層の予期せぬ妊娠相談が急増しているという。子育てを巡っては、産後うつや虐待などの問題も指摘されている。

 市町村にはアンテナを高く張り巡らせ、積極的にSOSをくみ取る仕組みを模索してもらいたい。その際、若者になじみのある会員制交流サイト(SNS)を広く活用すべきだ。

 若年妊婦支援では、取り組みが進む民間から学ぶ姿勢も重要だ。