沖縄戦の戦没者の遺骨を含む可能性がある土砂を、埋め立てに使うことは認められない。その意思表示が県内の議会で広がっている。

 少なくとも9市町村議会が月内に、埋め立てに使用しないよう政府に求める意見書を可決する見通しだ。県議会を含め、提案へ調整を続けている議会もある。大きな動きだ。

 既に可決した那覇市議会は、激戦地だった本島南部地域では戦没者の遺骨収集が戦後76年たった今も続いている、と指摘し、土砂使用の断念を求めている。

 南城市議会は「激戦地の南部地区から採取した遺骨混入土砂が、普天間代替施設の埋め立てに使われることは人道上許されない」と新基地建設との関わりを明記した。

 相次ぐ意見書可決は、沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松さんの訴えに端を発した。

 新基地建設工事は軟弱地盤の改良のため、当初の予定を大幅に上回る大量の埋め立て用土砂(岩ズリ)が必要になった。その調達先に激戦地だった糸満市と八重瀬町も含む計画が判明した。

 「戦没者の骨が混じり血が染み込んだ土砂を新基地で使うのは人道上許されない」。具志堅さんの訴えが県民の共感を広げ、各地の議会を動かしたのである。

 戦没者遺骨収集推進法は遺骨収集を「国の責務」と定め、2024年度までを集中実施期間に位置付ける。にもかかわらず土砂採取を優先させようとする政府の対応は県民の心を踏みにじるもので、受け入れられない。

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 沖縄戦では日本軍が本土を守るための持久戦で南部撤退を決行した結果、住民が巻き込まれ本島南部ではとりわけ多大な犠牲者を出した。

 戦後に収集されたものの、残った遺骨は少なくない。南部一帯は今も祈りの地だ。

 だからこそ具志堅さんが抗議の意思を示したハンガーストライキの場には、沖縄戦体験者ら多くの賛同者が訪れ思いを共有した。新基地建設を容認する自民党県連さえ、沖縄防衛局へ「県民感情に深く配慮」するよう求めたのだ。

 沖縄戦体験者は年々少なくなり、やがて誰もいなくなる「ポスト体験時代」が現実味を帯びる。沖縄戦の社会的記憶を風化させてはならない。体験者が急激に減少していく中で次世代への継承は急務であり、戦没者が眠る祈りの地をどう守っていくのか、全ての県民が試される場面だ。

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 菅義偉首相は「ご遺骨に配慮した上で土砂の採取が行える」と容認の姿勢を崩していない。官房長官時代に翁長雄志前知事との会談で「私は戦後生まれなので、沖縄の置かれた歴史については分からない」と述べ、翁長氏の言葉を受け止めようとしなかったことを思い出す。

 首相は沖縄戦についてどのような認識を持っているのか国会で歴史観を語るべきだ。

 歴史を顧みていかに学び取るかが政治家の仕事である。山中貞則氏や野中広務氏ら戦争を知る自民党の重鎮が健在だったら、この問題にどう反応しただろうか。