東京五輪の聖火リレーがきょう、東日本大震災と原発事故に見舞われた福島県からスタートする。新型コロナウイルス感染拡大で延期されてから1年。一般市民や著名人を含むランナー約1万人が、121日かけて全国859市区町村を巡る。聖火は7月23日の開会式で東京・国立競技場の聖火台にともされる。

 県内は5月1、2両日、那覇市の首里城公園を出発し、糸満市の平和祈念公園に到着するルートで、170の区間(約32キロ)を駆け巡る。

 本来なら、ギリシャの神殿跡で採火された聖火を人々がわが町の沿道で見守り、五輪の訪れを実感する機会である。大会本番への機運も高まるはずだった。残念ながら、現状はそうなっていない。最近の全国世論調査でも、今夏開催を望む人の割合は約23%にとどまる。

 コロナ禍で感染対策に細心の注意を払わなければならない。大会組織委員会は「沿道が過剰な密になったら、スキップして先に進む」などとし、「密集」を避けるよう呼び掛けている。

 著名人ランナーの参加辞退も相次ぐ。仕事のスケジュールの都合がつかないとする人が目立つが、新型コロナへの懸念を理由に挙げるケースも見られる。

 57年前の東京五輪は、聖火が全国を巡る壮麗な光景を眺め、人々は希望を見いだし、あすへの活力を感じ取った。コロナ禍の五輪も、市民が心から拍手を送れるよう、組織委はインターネット配信などを駆使しながら、聖火リレーを無事にやり遂げてほしい。

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 組織委が「試練の1年だった」と語るように、延期が決まってからのこの間、新型コロナの収束は見通せず、安全を最優先に感染防止対策に追われた。

 五輪を巡っては、新型コロナ以外でも難題続きだったと言える。

 五輪招致で安倍晋三首相(当時)が原発事故を「アンダーコントロール(制御)されている」とアピールしたことは、今なお物議を醸す。

 巨額の大会開催費への批判も浮上し、メイン会場の国立競技場は経費圧縮のため設計変更を余儀なくされた。

 最近でも、森喜朗氏が女性蔑視発言で組織委会長を辞任。開閉会式の企画・演出責任者が女性タレントの容姿を侮辱するような演出を提案し辞任に追い込まれた。相次ぐごたごたは、個人の資質の問題も多分にあるとはいえ、大会のイメージは傷ついた。

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 それでも、全国津々浦々を走る聖火ランナーは、五輪にそれぞれの希望を託す。沖縄であれば、出発地となる首里城の再建を願っていよう。初日に走る福島県の佐久間亮次さん(16)は、地元産食品の安全性をアピールしたいと考えている。福島、宮城、岩手3県の首長アンケートで76%が「復興五輪」に期待を寄せていることからも、その思いの強さが感じ取れる。

 菅義偉首相は開催の意義を「人類が新型コロナに打ち勝った証し」と繰り返すが、むしろ「復興」の思いを共有し、困難に立ち向かう姿こそ、五輪の理念にかなう。