性の多様性の尊重に特化した条例が県内で初めて可決された。

 LGBTの人ら性的少数者への差別を禁じた浦添市の「性の多様性を尊重する社会を実現するための条例」だ。10月に施行される。

 条例は、前文で「人には多様な性の形があり、誰もが自分らしく生きていく権利がある」とうたう。職場や教育の場など社会のあらゆる分野の活動で、性の多様性の尊重を求めている。

 性的少数者への理解は社会の中で少しずつ深まっているものの、まだ十分ではない。差別や偏見にさらされやすい現状を人権問題としてとらえ、浦添市が条例を定めた意義は大きい。生きづらさを感じている当事者を勇気づけるものだ。

 注目したいのは、性的少数者であることを本人の意に反して公表したり、本人に公表を強要したりすることなどを人権侵害として禁じた点だ。

 性的指向や性自認は極めてデリケートな事柄である。それを本人に同意なく第三者へ暴露することは「アウティング」と呼ばれ、深刻な問題となっている。

 東京都内で2015年、男子大学院生が同性愛者であると同級生に暴露された後に転落死した事案があり、それを機に社会問題化した。

 全国の当事者約1万人を対象にしたインターネット調査では、約25%がアウティングされた経験がある、と答えている。「職を失ったり不登校になったり、居場所を奪うことになりかねない」と当事者団体は危険性を指摘しており、対策は社会的な要請だ。

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 国は昨年6月施行の女性活躍・ハラスメント規制法の指針で、アウティングをパワハラと規定した。大企業には防止対策を義務付けているが、職場以外に規制はない。

 東京都国立市や豊島区などがアウティング禁止条例を制定し、都道府県では初めて三重県で4月の施行が決まった。

 ただ、条例を制定しただけで被害をなくすことは難しい。学校や家庭、社会への啓発活動、被害が発生した際の相談体制の整備など、実効性を高めるための施策が欠かせない。浦添市も今後の取り組みが重要になってくる。

 浦添市の条例には、同性のカップルらを公的に認めるパートナーシップ制度の導入も盛り込まれている。市は市営住宅の入居対象者の見直しを検討するという。自分らしく生きたいと願う当事者の権利保障につなげてもらいたい。

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 県も性の多様性尊重宣言「美ら島 にじいろ宣言」を発表した。「多様な性を理由とする偏見・差別やあらゆる種類の暴力を許さない」などの意思を示し、県民全体で共有するとしている。

 県による県民意識調査では回答者の4・6%が自分の体の性や心の性、性的指向に悩んだことがあると答えた。県は相談窓口を新たに開設するが、条例制定など、より踏み込んだ対策も求めたい。

 国の積極的な対応も問われる。包括的なアウティング防止策を含め差別解消に向けての法整備を検討すべきだ。