文部科学省は30日、2020年度の教科書検定の結果を公表した。本年度は高校教科書(主に1年生用)が対象だが、昨年度不合格だった中学歴史2点も再申請し、自由社の教科書が合格した。同教科書は沖縄戦について「日本軍はよく戦い、沖縄住民もよく協力しました」と、県民が進んで戦争に協力したかのように読みとれる記述がある。住民虐殺や「集団自決(強制集団死)」など日本軍の加害の側面への言及もなく、識者からは「殉国美談」との批判が出ている。

「集団自決」に関する記述の主な例

 自由社は、「新しい歴史教科書をつくる会」の中学歴史・公民教科書を発行している。昨年度の検定では405カ所の検定意見が付き、不合格になっていた。

 今回合格した同社教科書は、1879年の「琉球処分」についても、伊波普猷の言葉を引用する形で「一種の『奴隷解放』だった」と表記している。

 高校教科書で新たに必修科目となった「歴史総合」では、沖縄戦「集団自決」について12点中7点が記述した。「軍の強制」が読み取れる教科書がある一方、沖縄戦そのものの記述がわずかしかない教科書もあり、対応が分かれた。

 山川出版「歴史総合 近代から現代へ」は側注で、「事実上日本軍に強要された住民の集団自決事件もおきた」と、「軍の強制」の意味合いをにじませた。

 実教出版「歴史総合」は「軍民雑居の状態で部隊が配置されたため、その後の沖縄戦でいわゆる『集団自決』(強制集団死)や軍隊による住民殺害が発生する要因となった」と、「強制集団死」という用語を使って記述した。

 高校教科書は、新学習指導要領が「主体的・対話的で深い学び」を重視していることを反映し、沖縄の米軍基地問題や沖縄戦についてさまざまな資料や見方を提示しながら、生徒の考察や話し合いを促す教科書が目立った。

 従来の日本史と世界史の近現代史を融合させた歴史総合の特徴を生かし、ベトナム反戦運動と、B52爆撃機の出撃基地となった沖縄の復帰運動をつなげて考えさせるよう促す教科書もあった。

 尖閣諸島と竹島、北方領土については、地理総合と公共の全18点が取り上げ、いずれも「固有の領土」と記述した。