自らのセクシュアリティーへの葛藤を経て出会った2人が、セクシュアルマイノリティー(性的少数者)カップルとして動画配信やコミュニティーラジオなどで活躍している。男女ともに恋愛対象となる「バイセクシュアル」の安里ミムさん(28)と、体は男性だが心は性別に縛られない「Xジェンダー」のみーちゃん(31)。「キラキラした私たちを発信することで、悩んでいることが悩みじゃなくなる人がいたらうれしい」。真っすぐなミムさんの言葉に、みーちゃんがうなずいた。(学芸部・新垣綾子)

2人の出会いや現在の活動に至るまでの日々を振り返るみーちゃん(左)と安里ミムさん=3月2日、沖縄タイムス社(下地広也撮影)

■自覚した性的指向

 沖縄市出身のミムさんが、自らの性的指向を自覚したのは高校生の頃。初めての交際相手は男性の先輩だったが、先輩との恋愛を相談していた女友だちに対する好意や興味が勝ったことが始まりだ。「私って、おかしいのかな」。小中学校時代にいじめられたり、いじめたりした経験も、個性を抑え込み周りに合わせる処世術を植え付けていたのかもしれないという。苦悩は深まった。

 高校を卒業後、芸能事務所に入りバンドを組んだのは、自己肯定感が低く引っ込み思案な自身を変える「荒療治」だった。思いを寄せる女友だちに告白し、受け入れてもらったことでさらに自信が湧いた。男性への憧れもあるが、女性も好き。自分の本心に素直に向き合うと、楽になった。

 みーちゃんと出会ったのは、2020年1月。3回目のデートで性自認が男女どちらにも当てはまらないXジェンダーとカミングアウトされ、パズルのピースがぴったりとはまった感覚を覚えた。「男性に近いみーちゃんも、女性に近いみーちゃんも両方見られる。一石二鳥じゃん。ラッキー」

 香川県出身のみーちゃんは幼い頃から、仮面ライダーやウルトラマンといったヒーローより、華やかなディズニープリンセスに心ひかれた。今も「かわいい物」が大好きで、髪を伸ばしメークをして、時にはワンピースを着る。自身を「乙女系男子」と表現することもあるが「女性になりたいのかというと、それは違う」と話す。恋愛対象は女性で、心が男女の間を行き交う。

みーちゃん(左)と安里ミムさん=3月、那覇市・沖縄タイムス社

■心癒やした沖縄

 戸惑ってきたのは、例えば外出先のトイレだ。「女性用は使えないし、男性用に入ると白い目で見られる」。大型施設などでは多目的トイレを利用するが、小規模な店舗などには備えられていないことが多く、人気のないタイミングをうかがって入る。「人に嫌な思いをさせたくない。そう考えて、小さなストレスや我慢を積み重ねてきたかもしれない」

 さらに大学卒業後に県外の大手企業に勤めていた時には過労で心身のバランスを崩し、そううつ病を発症した。同じ頃に発達障がいの診断を受けて自暴自棄になり、死を選ぼうとして命を取り留めたこともあった。

 心を癒やしたのは沖縄の人たちだったという。19年1月に友人のつてで移り住み、間もなく働き始めた飲食店はセクシュアリティーに理解のある仲間ばかりだった。そして、共通の知人を通して知り合ったミムさんから飛び出した「一石二鳥」の一言。「ありのままの自分を認めてくれた。ミムと一緒にいたい」と強く感じた。

 2人は20年10月から沖縄市内で一緒に暮らす。互いにライターや店長の仕事を持ちながら、ユーチューブ配信や撮影モデル、高校での講演、FMコザで週1回の2時間番組を担当するなど活動の場を広げている。

コミュニティーFM局で毎週1回2時間のレギュラー番組を担当する2人。この日は「びっくりしたこと」などをテーマにリスナーとやり取りした=3月10日、沖縄市・FMコザ

■ゆるっと自然体

 ともに描いているのは、悩んでいる誰かにゆるっと自然体で寄り添うこと。「LGBTを理解できないのも一つの形で、間違っていると言うつもりはない。自分たちの存在を知った人たちの視野が少しでも広がり、差別を止める一歩になればいい」とみーちゃん。ミムさんも「たくさんの場所に出掛けて小さな声を拾い、力になれることがあれば私たちの思いや体験を語っていきたい」と意欲を語る。

 あのカップル、なんだか格好いいよね。人と違うってすてきだね。「若い人たちにそう思ってもらえる、憧れの存在になりたい」と迷いなく声をそろえる。

 2人の活動はユーチューブチャンネル「うさぎと猫【沖縄】」でもチェックできる。