私たちのプライバシーは今後十分に守られるのか、懸念が拭えない。

 菅義偉首相肝いりのデジタル庁新設を柱としたデジタル改革5法案が衆院内閣委員会で可決された。与党は月内の成立を目指す。

 法案は、押印や書面提出が必要な手続きを削減するなど、行政のデジタル化と自治体も含めた情報基盤の一元化を推進する内容だ。

 同時に個人情報保護に関する制度も改正され、自治体が独自に定めている個人情報保護条例は原則として全国共通のルールに一本化される。

 デジタル化による利便性向上が強調される一方で、この個人情報保護制度の変更には問題が多い。

 個人情報保護制度は、各地の自治体が国に先駆けて条例化することで発展してきた。

 このため性的少数者などのセンシティブな情報の保護や、本県のように個人情報を「自らコントロールする権利」を盛り込むなど、法律より進んだ内容を定める条例は少なくない。だが、これら先進的な条例はデジタル法成立後、全国統一ルールに「後退」することになる。最小限の独自規定制定は可能だが、法成立後は条例制定できる範囲が大きく制限される。

 行政機関が、本人の同意なしに個人情報を目的外利用できることも問題だ。これにより、病歴や資産など自治体が持つ情報が知らぬ間に国の機関に集積される恐れがある。監督機関となる個人情報保護委員会は行政機関には勧告しかできず、こうした目的外利用に歯止めがかからない懸念がある。

■    ■

 法案には、マイナンバーの利用拡大に関する改正も含まれる。マイナンバーを預貯金口座と結びつけ国からの給付金を受け取りやすくし、マイナンバーカードのスマートフォン搭載を可能にする。転出届などの手続きもオンラインでできるようにする。

 マイナンバーは、個人情報漏えいの懸念から社会保障、税、災害対策の3分野に限り利用する前提で導入されたが不正利用への恐れは根強く、カードの普及率は26%だ。それなのに利用拡大に向けた十分な情報漏えい対策が示されているとは言えない。

 政府はさらに、新型コロナウイルスのワクチン接種履歴管理などにもマイナンバーの利用を検討しているという。前のめりに用途拡大を進めようとの姿勢には違和感を抱く。政府による国民監視につながらないよう、一定の歯止めをかける必要がある。

■    ■

 デジタル改革関連法案は約60の法律を一括して改正する「束ね法案」だ。まとめて審議するため議論が深まりにくく、安倍晋三前首相時代から多用されるこの手法にも批判が強い。その上法案の参考資料に45カ所ものミスが見つかり、成立へとはやる政府の拙速ぶりが浮き彫りとなった。

 法案の審議は今後参院に移る。参院では、同法案が国民のプライバシーを不当に侵害することはないのか、政府は丁寧な説明に努めるべきだ。利便性や国際競争力を追求して人権をないがしろにするのは許されない。