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“パワースポット”斎場御嶽、コロナ禍のいま 盗難にあった香炉の意義とは?【深掘り・WEB限定】

2021年4月6日 09:54有料

 全国的にも“パワースポット”として知られ、多くの観光客が訪れる南城市の斎場御嶽(セーファウタキ)。その御嶽内にある香炉1基が5日、なくなった。今回なくなった香炉は、斎場御嶽の中でも最も有名な拝所「三庫理(サングーイ)」にあった。2000年に世界文化遺産に登録されて以降、訪れる人が急増した人気観光地・斎場御嶽のコロナ禍の現状と香炉の意義とは?(デジタル編集委員・與那覇里子、南部報道部・松田興平)

 斎場御嶽は、琉球最高の聖域とされている。
 琉球王国最高位の神女「聞得大君(きこえおおきみ)」の就任儀式などが営まれ、琉球民族のはじまりとされる「アマミキヨ」が住み着いた聖地を国王らが巡拝する「東御廻り(あがりうまーい)」の参拝地でもあった。

 斎場御嶽には主に六つの拝所があって、特に「三庫理(サングーイ)」は、二つの大きな岩が絶妙なバランスで寄りかかり、支えあっている。その岩のトンネルを抜けると、「神の島」とも言われる久高島が見えてくる。近年、金の勾玉も見つかり、とても意味のある場所だということが分かる。

 世界遺産登録される2000年以前、拝所には限られた人々しか足を踏み入れることができなかった。しかし、メディアで取り上げられることが増え、“パワースポット”として注目されるようになると、訪問者が急増。「三庫理」で騒ぎながら写真を撮ったり、香炉に上ったりするなどマナーの悪さも散見された。

 南城市は2007年から斎場御嶽を整備して、有料化。入場者数が最多の約43万8千人を記録した12年度からは年に2回、立ち入りを禁止する「休息日」を設けることにした。それでも、国内外から“パワースポット”への魅力は衰えず、多くの人を魅了している。
 

 新型コロナウイルスの影響で2020年4月7日から6月26日まで臨時休業。27日に入場できるようになってからは、「三庫理」のトンネルの前に、木の柵が置かれていて、立ち入りが制限されている。それでも、休業明けから「予想以上の人出(当時の市観光協会)」で、再開初日は休業前の土、日の約半数となる約530人が来場した。

 香炉とは、沖縄大百科事典によると「神や祖霊をまつるための媒介となる容器」のこと。村落では御嶽や拝所などに置かれ、聖地の目印になる例も多いという。

 今回なくなったのは、四角い石の香炉で、琉球王国時代の最高神女の就任儀式のたび香炉が1基ずつ拝所へ置かれ、1875年までに現在の状態となっていた。
 

 この「三庫理」の香炉は、岩壁の下に置かれている。その場所には昔、クバの木が生えていて、ニライセジ(霊力)が久高島を経て、その岩壁頂上の「頂の鼻」(ちょうのはな)からクバの木を伝わって香炉のところへ降りるとされてきた意味のある場所でもある。

 沖縄では拝所をめぐり、近年、こんな事件もあった。
 2020年3月17日、琉球開びゃくの神、アマミキヨゆかりの地とされる沖縄の南にある南城市指定の有形民俗文化財「ヤハラヅカサ」の標柱が白いペンキで塗られていた。
 塗ったのは沖縄本島の中部から訪れた男性で、塗っている様子を市民に目撃されて発覚した。

 男性は、日ごろから沖縄県内各地の御嶽を参拝していて、塗った理由も「(文字が)見えやすくなるようにと考えて塗った」と語り、塗った当時も標柱の周りを清掃していたという。
 南城市の教育委員会は「男性に悪気はなかったと受け止めた」と説明。御嶽への思いが溢れ、良かれと思っての行動が事件に繋がることもある。

 今回の出来事も、アマミキヨ浪漫の会の大城勇会長の言うように「愛好家か信心深すぎる人の行動か分からない」。ただ、歴史や背景をはじめ、なぜ聖地なのかということを、再考する大きな機会にしたい。

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