後継者がおらず整備できなくなった森林を市町村が仲介し、林業事業者に貸し出す取り組みが徐々に広がっている。事業規模を拡大し、適切な管理で森林の防災機能を高めるため2019年度に始まった。ただ、手続きの第一歩となる所有者の意向調査に着手できていない自治体も多い。山林の所有者不明や専門人材の不足といった課題が浮かぶ。

 所有者から委託を受けて、整備が進む宮崎県えびの市の山林=2月

▽両立に悩み

 スギ丸太の生産量が日本一の宮崎県。IT企業を経営する川野和成さん(59)に、地元えびの市から「所有山林に関する意向調査票」が届いた。山林の状況を確認した上で、市に管理を委託するかどうかを問う内容。

 川野さんは15年に亡くなった父親から1・6ヘクタールを相続したが「スギは手つかずのまま。会社経営と山の管理の両立はできず悩んでいた」といい、任せることにした。

 この制度は19年4月施行の森林経営管理法に基づき始まった。市町村は、整備に手の回らない所有者から経営管理権を移してもらい、事業の採算がとれる場合、森林組合などの民間事業者に管理を委託。所有者は木の販売益の一部を受け取る。

 記録的な豪雨が増え、放置された山林で相次ぐ土砂崩れが問題となり、導入が決まった。

▽負担

 林野庁によると、19年度に390市町村が計約15万ヘクタールの意向調査をし、実際に55ヘクタールが民間事業者に委託された。ただ放置されたままの可能性がある私有人工林は全国で440万ヘクタールに上る。四国の2・3倍の面積に相当し、管理委託を広げる余地は大きい。

 取り組みが遅れる背景には、森林の所有者が分からない問題がある。山林は土地としての価値が低いため、「相続しても登記をしない人が多い。所有者を探すのが大変だ」と、えびの市の担当者は話す。所有者が不明の場合、一定期間公告すれば委託はできるが、手間や時間がかかる。

 民間に委託するには、森林の生育状況や林道の現地調査を行い、採算性を見積もることも必要で、市町村の負担は大きい。石川県内の森林組合の幹部は「2、3年で担当が変わる自治体に専門職員を育てることは難しい」と指摘。この組合は行政の依頼を受け調査業務などを請け負っている。

▽追い風

 終戦後に全国的に植えられたスギやヒノキは伐採期を迎えている。海外産よりも価格や品質が安定しているなどの理由で国産材の需要は伸び、利用拡大に追い風が吹く。

 住友林業は19年9月、山口県長門市と協定を結び、林業従事者の育成や森林所有者の把握を支援する。同社山林部の岡田広行グループマネジャーは「国産木材の利用が増えている中で、(管理委託制度は)新たに資源を確保するツールになる」と期待する。同社は自治体との提携を広げる方針だ。