「王朝食パン識名園」-。店名からただ者ではない。那覇市真地にある世界遺産「識名園」の券売所横に小さな売店が3月28日、新規開店した。真地に本店を構える人気店「いまいパン」と真地自治会が共同で運営する。「国王の食パン」と「王妃のぶどうパン」の2種は、この売店のみ販売。世界遺産の入り口で「地域を盛り上げたい」と企業と地域が協力し、一歩を踏み出した。(那覇担当・勝浦大輔)

識名園の券売所隣にオープンした売店「王朝食パン識名園」を運営するいまいパンの今井陽介さん(前列左)、あいこさん(同右)、真地自治会の瑞慶覧長信会長(後列右)、宮城守人副会長(同2人目)ら関係者=9日、那覇市真地

 いまいパンの今井あいこさん(43)は市識名出身で、識名園は父が近くで店を営んでいたため身近だった。観光客は園に来ても、周辺は素通りなのがもっぱらだ。「もっと地域に還元されるような取り組みはできないか」。市の公園施設を活用した事業実施についてのアンケートに答え、自治会と協力した売店運営につながった。

 初めは、市長賞を受賞したいまいパンの四つの菓子商品を中心に、観光客相手のお土産品店にするつもりだった。が、新型コロナウイルス感染拡大の影響で観光客は激減し、状況は一変。「地域のお土産になるようなパンを」と2種の食パンを約1年かけて開発し、地域を識名園に引き付ける構想に切り替えた。夫でオーナーの陽介さん(44)は「日常に身近なパンで、地元の人にも園に来るきっかけにしたい」と相乗効果を狙う。

 コロナ禍で、開店は予定より1年延びた。入園客が落ち込む中でのオープンを、周囲には反対されたという。だが「閑散としている識名園を見て、どうにかしたい思いも強かった。地元の人にとって、ここは大切な場所」と2人は揺るがなかった。

 真地自治会は、15年前から識名園の駐車場を使い毎年8月に納涼夏祭りを開く。こども園の七五三、小学校の十三祝いは園内で実施するなど、琉球王家最大の別邸として歴史を持つ園と、密接に関わってきた。

 自治会の瑞慶覧長信会長(68)、宮城守人副会長(69)は「この売店を通して、歴史を継承しながら、新しい流れをつくりたい」と意気込む。「来年建て替え予定の、赤瓦屋根の公民館でお客さんにくつろいでもらい、踊りや古典音楽を楽しんでもらうのもいいかもしれない」とコロナ収束後に戻る観光客の取り込みも見据える。

 売店の販売員は自治会員が担う。入園チケット持参で割引、自治会と一緒になったイベントなどを計画中。「これからもっと盛り上げていく」とそれぞれに気合を入れる。その先の大きな目標に描くのは、地域みんなで考え出した商品開発だ。