クラスに1人か、2人というのは、決して少ない数ではない。本来守られるべき子どもの権利が脅かされている状況を考えれば、即効性のある対策が必要だ。

 大人に代わり家事や介護など家族の世話をする「ヤングケアラー」の実態を把握しようと、厚生労働省と文部科学省が初めて取り組んだ調査結果が明らかになった。

 全国の中学2年生と高校2年生を対象に実施され、「世話をしている家族がいる」と答えた中学生が5・7%、高校生(全日制)が4・1%に上った。割合から推計すると中高の1学年だけで、その数は約10万人となる。

 世話をする相手は、幼いきょうだいが一番多く、身体障がいなどのある父母、介護などを必要とする祖父母と続いた。

 世話や介護にあてる時間は1日平均で中学生4・0時間、高校生3・8時間。帰宅後、これだけ家族の世話に費やすとなると、部活や勉強、友人関係といった学生らしく過ごせる時間は大きく制約されるだろう。

 「親が仕事を休めない時、自分が学校を休み看病した」「夜遅くまで世話をして、学校の授業に集中できないことがあった」「ケアしながらでも進める進路を広げてほしい」。学業や進路への影響など自由意見として寄せられた声はどれも切実だ。

 問題が深刻なだけに、初の調査が映し出す課題を社会全体で共有し、その重要性に向き合うスタートとしなければならない。

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 家庭内のことで実態把握が難しいとされてきた問題だ。デリケートな事柄だけに声を上げにくいとも言われてきた。ヤングケアラーという概念そのものの周知も進んでいない。 

 明らかになった数値には少なからず衝撃を受けたが、それでも取りこぼしがあるのではないか。

 調査では世話をする中高生の6割超が「誰にも相談したことがない」と答えている。 さらに学校側に尋ねた項目では、ヤングケアラーの有無について、2校に1校が「いない・分からない」と回答している。クラスに1~2人の調査結果と懸け離れるものだ。困っているのに必要な支援が届いていない可能性が高い。

 表面化しにくい家族介護の状況をつかむには、子どもと接する学校現場の気付きが鍵となる。スクールソーシャルワーカーの力も借りながら、もう一歩踏み込んでほしい。

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 ヤングケアラーの中には「家族だから当たり前」と頑張る子が多い。ただその頑張りを強いているのは、自己責任論が幅を利かせる社会の側ではないか。年齢に不釣り合いな世話や介護は、子どもらしく生きる権利を奪う。

 埼玉県は昨年3月、病気や障がいのある家族を世話する人を支援する条例を全国で初めて制定した。ヤングケアラー経験者を中高校に派遣する「出前授業」などを計画しているという。

 子の悩みを受け止め公的支援につなぐためにも、県も実態調査に乗り出すべきだ。