戦没者の遺骨を含む可能性のある土砂が新基地建設工事に使われる懸念は残されたままだ。

 玉城デニー知事は、沖縄戦跡国定公園内にある糸満市米須の鉱山開発計画について、自然公園法に基づき、関係機関と遺骨の有無を確認した上で土砂採取を始めるよう措置命令を行うと表明した。採掘に当たっては遺骨が混じった土砂を採取しないよう留意することも求めた。

 この場所は沖縄戦の激戦地であり、近隣には住民や軍人が多数亡くなったガマ、慰霊塔などがある。

 開発に反対する市民は採掘禁止を求めていた。しかし知事は「法制度上の限界がある」としてそこまでは踏み込まなかった。

 禁止は鉱業権という私権の制限になることを踏まえたものだが、知事の語った「戦没者に寄り添う」内容からは遠く、混入防止の担保となるか不透明だ。

 沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松代表が話すように、風化した遺骨骨片を判別するのは経験者でも難しい。遺骨の有無だけでなく、多くの県民の血が流れた土地から集めた土砂を軍事基地建設に利用しようとすることは県民感情を逆なでしている。

 県議会は、遺骨が混入した土砂を埋め立てに使わないよう求める意見書を全会一致で可決した。与野党を超え一致した決議の意味は重い。

 知事はその求める内容を譲ってはならない。

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 南部での土砂採取が問題になったのは、名護市辺野古の新基地建設で国が県に行った設計変更申請のためだ。

 当初、埋め立ての土砂調達は県内では北部からのみで7割が県外とされた。変更申請でこれを見直し、全量を「県内でも調達可能」とした。その多くは南部からと見込まれる。県の県外土砂規制条例適用を避ける狙いとみられている。

 沖縄戦では約20万人の住民や兵士が亡くなり、犠牲は第32軍司令部の南部撤退以降急増した。今も2790柱の遺骨が見つかっていない。

 多数の犠牲者が眠るこの地の土砂を米軍基地建設に用いるのは、全国の遺族にとっても耐えがたいことだろう。

 だが政府は「土砂調達先は現時点で確定していない」というのみで、県民の要求にどう対応するかは明らかにしていない。戦没者遺骨収集推進法に、遺骨収集が「国の責務」と定められていることを忘れないでほしい。

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 新基地建設阻止を訴え続けた翁長雄志前知事は、公約を守り抜くため命を削るような日々を過ごした。翁長氏の後継として当選した玉城知事だが、土砂問題については県議会で「到底認められない」と述べたものの、対応は措置命令にとどまっている。

 知事の言う法令に基づく対応は分かるが、それだけでは限界があることも明らかだ。知事はこの問題の解決に政治生命を懸ける覚悟で当たるべきだ。政府に「南部から採取した土砂を使用しない」と言わせるため、県民世論も力にした政治力を発揮してもらいたい。