菅義偉首相とバイデン米大統領が、対面では初めてとなる首脳会談を米ワシントンで行った。

 軍事的にも経済的にも影響力を強める中国にどう向き合うかが最大の課題であった。

 注目すべきは共同声明に、中国の軍事的な挑発で緊張が続く台湾問題が盛り込まれたことだ。「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調する」と明記された。

 日米首脳の共同文書で台湾に言及するのは52年ぶり。1972年の日中国交正常化以降は初めてとなる。

 前回言及したのは、沖縄返還に合意した69年の佐藤栄作首相とニクソン大統領の会談時の共同声明だった。「台湾地域における平和と安全の維持も日本の安全にとって極めて重要な要素」とする、いわゆる「台湾条項」と呼ばれる文言だ。

 台湾海峡では昨年の夏以降、中国軍戦闘機が中間線を越えて台湾側に侵入するなど軍事的な挑発を強めている。米軍幹部は中国が「6年以内」に台湾に軍事侵攻する可能性があると危機感をあらわにする。

 台湾を巡って緊張が高まれば、地理的に距離が近く、米軍基地のある沖縄がもろに影響を受ける。衝突は何としても回避しなければならない。

 共同声明には、中台の「両岸問題の平和的解決を促す」と記されている。中国は「強烈な不満」と激しく反発しており、日中関係が冷え込むことが予想される。日本は中国と率直な対話を重ね、緊張緩和を働き掛けてもらいたい。戦略的な外交が求められる。

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 尖閣諸島周辺でも中国は活動を活発化させている。海警法によって中国海警局が武器使用を認められるようになり一触即発の懸念が高まる。

 中国の力による現状変更は許されない。強く自制を求めたい。

 バイデン政権は米中の対立を「民主主義と専制主義の闘い」と位置付け、「クアッド」と呼ばれる日米豪印4カ国の枠組みなどを活用して中国に揺さぶりをかける。

 米中関係は「新冷戦」と呼ばれるまでに悪化した。日本はその最前線に立たされることになるが、安易に軍事的な役割を担うのは危険だ。

 会談では、名護市辺野古の新基地建設が「普天間飛行場の継続使用を回避するための唯一の解決策」として推進することが改めて確認された。

 新基地建設には米政府の調査機関からも実現を困難視する報告が相次いでいる。同盟強化の名の下に思考停止に陥っているとしか思えない。

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 共同声明は、新型コロナウイルス対策や気候変動問題などの課題で協力することを確認した。

 こうした地球規模の課題は、中国を含む国際社会が団結して取り組まなければならない。バイデン政権も、気候変動問題を担当する大統領特使を中国に派遣するなど連携を試みている。

 特に日本は中国と経済的な関係が深く、互いに五輪を控えているという共通点がある。相互協力が可能な分野を増やし日米中3カ国の信頼醸成を図っていくべきである。