県が制定を目指すヘイトスピーチ規制条例について、6割に当たる25市町村が「必要」と考えていることが県の調査で分かった。「必要ない」と答えた9市町村、「どちらともいえない」の7市町村を大きく上回った。

 特定の人種や民族、出身地などの属性を持つ人を差別し憎悪をあおる言動に、対応が必要との認識が行政に広がっていることを示すものだ。

 那覇市役所前では5年以上もの間、ヘイト街宣が繰り返されていた。通り掛かった中国人らを主催者が追い掛け「出て行け」と怒鳴ったり、暴力的な言葉を浴びせたりするなどの言動があった。

 現在は、ヘイトに対抗する市民有志のグループが集まることで街宣を止めている。表面上は収まったかのように見えるが、根本的な解決にはならない。インターネットでの扇動も深刻だ。

 調査では市町村から、国際化が加速する中で「人種差別問題が増えることが予想される」との懸念が示された。

 「観光立県を標(ひょう)榜(ぼう)する以上、外国からの観光客や在留外国人に不快な思いをさせるヘイトスピーチを規制する条例は必要だ」との積極的な意見もあった。

 沖縄にはコロナ禍前の2019年、293万人の外国客が訪れた。出入国在留管理庁の統計によると同年末現在、中国籍の2852人が県内で暮らす。韓国籍も1497人いる。

 これらの人々の安全や人権が脅かされることがあってはならない。条例の制定に向け議論を深める時だ。

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 玉城デニー知事は昨年末、条例やヘイトスピーチを許さない宣言について「検討しながら進めていきたい」と明言した。

 ただ、検討は内部にとどまり県議会の2月定例会でも具体的な進展を示せなかった。

 ヘイトスピーチの規制を巡っては、憲法で保障されている「表現の自由」を制約しかねない、との指摘がある。

 今回の調査でも市町村からは「どこまでが不当な差別的言動でどこまでが許されるのか、具体的なガイドラインが必要」などの意見が挙がった。もっともな指摘である。

 参考にしたいのは先行する自治体の条例だ。

 川崎市は昨年、全国で初めて刑事罰を設けた条例を全面施行した。違反者に対して厳格な措置に踏み込むことによる抑止効果を期待する。

 東京都や大阪市もそれぞれ条例を制定している。内容を研究し、専門家を交えて開かれた場で議論してほしい。

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 16年に施行されたヘイトスピーチ解消法は、保護対象を「本邦外出身者」としている。ただ、沖縄の条例を考える上では「沖縄ヘイト」にどう対処するかも当然議論すべきだ。

 ネット上では、米軍基地に反対する市民に向けられた侮蔑的な書き込みが後を絶たない。根拠のないデマ情報も流布され、偏見や誤解を生んでいる。このままでは社会の分断につながりかねない。

 差別は許されないという意識を社会に根付かせ、被害者の救済につながるような実効性のある条例を求めたい。