日本が戦前、植民地支配していた台湾と韓国のハンセン病元患者の家族が、救済を求め動きだしている。

 国の誤った隔離政策によって差別に苦しむ家族に対する補償法に基づき、台湾の家族6人は既に申請を済ませた。韓国の家族約60人も近く申請するという。関係機関が連携し、速やかに補償を実施すべきだ。

 ハンセン病を巡っては、2019年に熊本地裁が家族への差別被害を認め、国に賠償を命じる判決を言い渡した。これを受け施行された家族補償法は、旧植民地の元患者家族も対象としている。

 家族訴訟の弁護団がその被害に本格的に向き合ったのは判決後。現地の法律家が韓国の療養所「小鹿島(ソロクト)更生園」や台湾の「楽生院」に関する被害聞き取りや陳述書の作成を担った。

 両療養所は日本のハンセン病患者隔離政策に基づいて開設されたもので、強制的に収容し重労働や断種手術、神社参拝などを強要した。感染症問題と民族差別で、「国内をはるかに上回る二重の人権侵害があった」とされる。

 隔離が助長した偏見によって家族というだけで地域から排除され、結婚や就職などの場面で差別を受け、家族の離散や分断を強いられたといった被害は想像に難くない。

 終戦前、韓国では約6千人、台湾では約700人が療養所に収容されていた。家族であることの証明など申請に必要な資料集めでは相互の協力が必要だ。広く迅速に被害を救済するためにも特別な配慮を求めたい。

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 01年、元患者本人による国家賠償請求訴訟で熊本地裁は隔離政策を違憲とし、原告が全面勝訴した。しかし同年施行されたハンセン病補償法は、当初、運用面で旧植民地の療養所を含んでいなかった。韓国、台湾の元患者らが提訴し、06年の法改正によって対象となった経緯がある。

 家族補償では当初から旧植民地も含むが、安心して法律の適用を受けられるかは、また別の問題だ。

 家族補償法の施行から約1年半、全体でも申請は6980件、認定は6699件にとどまっている。対象とされる約2万4千人の3割にも届いていない。

 家族が患者だったことを周囲に打ち明けていない人も多く、二の足を踏んでいるのだろう。

 海外に住む対象者の場合、言葉の壁もある。情報が届いていない可能性も高い。平等な補償の実現には、申請を促す仕組みが必要だ。

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 ハンセン病問題は、補償の契機となった01年の熊本地裁判決から来月で20年となる。

 補償金申請が伸び悩んでいることが示すように、差別を恐れる状況は大きく変わっていない。

 図らずもコロナ禍で露呈したのが感染者への偏見差別である。官民で患者を地域から排除した「無らい県運動」と、「自粛警察」に象徴される同調圧力は重なり合うところがある。

 偏見と差別をなくす国の取り組みが不十分なことは明らかだ。