全国で新型コロナウイルス変異株が拡大する中、沖縄県内への流入を抑えるため「水際対策」の拡充が急務となっている。県は3月、那覇空港でのPCR検査の定員を1日300人に拡充した。しかし周知不足や検査費の高さなどから、20日時点の1日平均受検者は約100人と定員を大幅に下回る。変異株の検査対象にもなっていない。(社会部・玉城日向子、篠原知恵)

到着ロビーに設置されたPCR検査場を示す案内板=20日午後、那覇空港

那覇空港のPCR検査場

到着ロビーに設置されたPCR検査場を示す案内板=20日午後、那覇空港 那覇空港のPCR検査場

 本島北部では9日、感染力の強いN501Y変異株に15人が感染したと判明。県によると、関西からの来県者との会食を機に広がった。3月上旬に県内で初確認された同株の感染者2人も県外からの帰省者と接触しており、県内の感染拡大は「変異株の流入をどれだけ防げるかにかかっている」(医療関係者)との見方もある。

 県が希望者を対象に那覇空港内でPCR検査を始めたのは2月。20日時点で7212人が検査を受け17人の陽性が分かったが、受検者は1日平均99人にとどまる。

 検査費用は県外在住者5千円、県民3千円。那覇市内では2千円で受けられる所もあり、県専門家会議は「検査費用をもっと安くすべきだ」と指摘する。

■感染者ゼロの小笠原村

 沖縄と同じ島しょ地域の小笠原村(東京)は昨年8月から水際対策を強化、12月から感染者は出ていない。村は島へ渡る船に乗る客に、事前に必ずPCR検査を受けるよう要請。費用は村や都、検査会社などが全額負担し、来島者の9割強が受けている。受検者に発行される「検体受領証」などがないと、ガイドツアーや飲食店を利用できないなど、検査を促す仕組みを整えている。

 県専門家会議委員の成田雅医師(県立南部医療センター・こども医療センター、中部病院)は「沖縄も同様の対策を取るべきだ」と指摘。事前検査の義務化は難しくても、ホテル宿泊時などに陰性証明を提出すれば割引を受けられるなど、来県前のPCR検査を促す仕組みづくりを提案。ワクチン接種歴のない旅行者に対しては「来県前後の検査を無料で当たり前に行える仕組みを、官民一体で整備すべきだ」と話す。

 県内で営業時間短縮要請などの感染対策をしても、不完全な水際対策では、県外から陽性者が入り込むことを懸念し「具体的で実効性のある対策がなければ、炎に油滴を垂らすように感染拡大は繰り返される」と強調した。

■来県者「無料にして」

 県は、観光やビジネス、帰省などで来県する人に、出発地で事前にPCR検査を受けるか、難しい場合は那覇空港での検査を呼び掛けている。だが「知らなかった」と話す来県者も多い。

 「那覇空港で検査できるなんて知らなかった」。東京都と千葉県から観光で来た25歳の女性2人組は声をそろえる。だが県外在住者は5千円と聞き「高い! 無料にしてほしい」。事前検査は受けていない。北部でゆっくり過ごすという。

 子どもの結婚式で来県した徳島県の女性(54)も「空港の検査は知らなかった」と明かし「事前に検査は受けていない。感染が怖いので、徳島に帰ってから受けます」。大阪府から帰省した女性(25)は「大阪も大変だけど、沖縄の感染拡大を知っていたので事前にPCR検査を受けてきた。陰性だった」と話していた。