社説

社説[カジノ法案可決]審議の形骸化は深刻だ

2016年12月4日 09:37

 ネット上には「爆速」という造語まで現れた。尋常ではない驚くべきスピードという意味で使っているのだろう。

 11月30日に審議入りしたばかりだった。審議時間は2日間でわずか6時間。自民党が採決を強行したために、論点の多くが議論もされず、積み残されたままだ。

 議員立法として提出された「統合型リゾート施設(IR)整備推進法案」(カジノ解禁法案)は、2日の衆院内閣委員会で採決され、自民、日本維新の会などの賛成多数で可決した。自民党は6日に衆院を通過させる考えである。

 カジノ導入については県議会でも何度も議論された。経済の活性化や雇用拡大のメリットを強調しカジノ導入に賛成する意見がある一方、否定的意見も根強い。

 ギャンブル依存症の増加にどう対処していくのか。ギャンブルと貧困の悪循環が固定され、ますます格差が広がるのではないか。

 治安の悪化や青少年への悪影響、暴力団の関与を心配する声も多い。

 県内の議論では、「基地とギャンブルの島」というマイナスイメージが定着し観光にもマイナス、だと指摘する意見もあった。いちいちもっともな疑問である。

 カジノ解禁法案が成立した場合、競馬、競艇、競輪などの公営ギャンブルや、独特の営業形態を採用しているパチンコとの兼ね合いが問題として浮上するのは確実だ。そのような重要な論点の審議も尽くされていない。

 国会審議は形骸化し、単なる儀式と化しつつある。

■    ■

 政府、自民党は環太平洋連携協定(TPP)承認案、年金制度改革法案に続き、今国会で三度(みたび)、強行突破を図ったことになる。

 公明党は、協力を迫る自民党の圧力に抗しきれず、ついに自主投票で臨んだ。慎重審議を促すのが与党公明党の役割だったはずなのに、それが果たせなかったのである。

 国会の数の力に安住した自民党のおごりと緩みが国会審議の形骸化を助長しているところがある。

 TPP承認案を審議する衆院特別委員会の理事だった自民党の福井照衆院議員は9月、「強行採決という形で実現するよう頑張らせてもらう」と発言し、理事辞任に追い込まれた。

 山本有二農相も10月、佐藤勉衆院議院運営委員長に強行採決を促すかのような発言をして野党の批判を浴びた。萩生田光一官房副長官は野党の対応を「田舎のプロレス」「茶番だ」とこき下ろした。

■    ■

 年金法案をめぐって、民進党議員の質問に対し、「私が述べたことをまったくご理解いただいていないようであれば、こんな議論を何時間やっても同じですよ」と答弁したのは安倍晋三首相である。

 国会における「少数意見の尊重」は、決してお題目やきれい事ではない。少数意見が無視され、何でも数の力で押し切るようになると、国会審議はますます形骸化する。国会審議が形骸化すれば、行政に対する監視も弱まる。

 三権相互の監視と牽制(けんせい)がほころびを見せつつある現状は危うい。

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