選択的夫婦別姓論議に一石を投じる判断だ。

 米国で別姓のまま結婚した映画監督の想田和弘さんと映画プロデューサーの柏木規与子さん夫婦が、日本でも婚姻関係にあることの確認を求めた訴訟の判決が東京地裁で言い渡された。

 民法では日本人同士が結婚する場合、どちらか一方の姓に決めなければ婚姻届が受理されず、戸籍にも夫婦関係が記載されない。そのため海外で合法的に成立した「別姓婚」が、日本でも公的に認められるかどうかが争われた初のケースだった。

 判決で注目すべきは、二人の結婚が日本でも有効であると認められた点だ。婚姻の方式は「挙行地の法による」と定められているため、米国で成立した婚姻は、姓を決定する以前に「日本でも成立する」としたのだ。

 日米で活動する想田さんと柏木さんは、1997年に居住していたニューヨーク州で結婚した。同州は別姓も選択でき、二人は「違うルーツを持つ人間であることを前提に一緒になりたい」と迷わず別姓婚にしたという。 

 夫婦であると認められた一方、別姓のままの戸籍記載はかなわなかった。

 地裁は戸籍に関し「戸籍法に基づき、家裁に不服を申し立てる方が適切だ」とし、訴えを退けた。夫婦同姓を定めた民法の規定を「合憲」とした2015年の最高裁大法廷判決を踏襲したといえる。

 婚姻は有効としながら、身分関係など法的効果を受けることができないというのは矛盾する。

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 15年の最高裁判決は、民法規定を「合憲」としつつ、選択的夫婦別姓は「国会で論じられるべきだ」とボールを返すものだった。

 だがこの間、国会での議論はほとんど聞こえてこなかった。「塩漬け」にされたばかりか、昨年末、閣議決定された第5次男女共同参画基本計画からは「選択的夫婦別姓」の文言が消えた。自民党反対派の攻勢で頓挫したのだ。

 この問題を考える時、何より重視しなければならないのは、結婚の当事者である若い世代の声である。

 政府が実施したパブリックコメントには「仕事や生活に支障を来している」「事実婚では子どもが持ちづらい」など導入を求める切実な意見が寄せられた。

 研究者と市民団体が昨秋実施した調査では、選択的夫婦別姓への賛成は7割に達し、中でも20~30代の賛成率が高かった。必要性は明らかだ。

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 政府の計画から「夫婦別姓」が削除された危機感もあり、法制化を求める市民団体の声はこれまで以上に強まっている。

 事実婚の男女が起こした夫婦別姓を求める訴訟では、最高裁が再び大法廷で審理することも決まっている。改めて憲法判断が示される可能性が出てきた。

 夫婦は同じ姓と法律で決めている国は日本のほかに見当たらず、世界の潮流から大きく取り残されている。

 次期衆院選で、各党がどう取り組もうとしているのかもしっかり注視したい。