広島の街を走る路面電車に、人目につきやすい大型の看板に、県選管がつくったこんなキャッチコピーが掲げられ、話題を呼んだという。

 「だまっとれん。」

 菅政権発足後、初の国政選挙となった衆院北海道2区と参院長野選挙区の補欠選挙、参院広島選挙区の再選挙は、北海道での不戦敗を含め自民党が全敗した。

 広島は、公選法違反(買収)で有罪が確定した河井案里前参院議員(自民離党)の当選無効に伴う再選挙だった。

 自民党本部から河井氏側に渡された1億5千万円という巨額のカネは、どのようにして生み出され、どこに使われ、どのように処理されたのか。

 自民党はまだ説明責任をきちんと果たしていない。それどころか政治不信を積極的に払拭(ふっしょく)しようとする意思すら感じられない。

 保守地盤の広島で、自民公認候補が野党系新人に敗れたのは、有権者の不信感の表れ以外のなにものでもない。

 選挙中、この自民公認候補は風当たりがあまりにも強いため「党本部は納得できる説明をすべきだ」と語ったそうだ。

 自民党本部は、しかるべき場を設け、説明を尽くす必要がある。

 衆院北海道2区は、鶏卵汚職事件で業者から500万円の賄賂を受け取ったとして収賄罪で在宅起訴された吉川貴盛元農相の辞職に伴う選挙だった。

 吉川氏も事件発覚後、病院に入院し、説明責任を果たすことなく議員を辞めた。

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 「政治とカネ」を巡る自民党の事件発覚後の対応は、有権者に対する誠実さに欠ける。弱い野党をみくびって国会の数の上にあぐらをかいているようにしかみえない。

 そのような態度にお灸(きゅう)をすえたのが今度の選挙結果だ。

 立憲民主党の羽田雄一郎元国交相が急死したのは新型コロナウイルスに感染したためだった。

 「弔い合戦」となった長野では、野党が不十分なPCR検査体制やワクチン接種の遅れなど菅政権のコロナ対応を批判した。

 東京や大阪などに3度目の緊急事態宣言が発令されたのは25日、投票日のまさにその日であった。

 政権与党は「政治とカネ」「コロナ対策」を巡って、三つの選挙すべてを落としたのである。「国民の審判を謙虚に受け止める」という通り一遍のメッセージだけでは済まない事態だ。

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 東京五輪・パラリンピック組織委員会が日本看護協会に対し、大会の医療スタッフとして看護師500人の確保を依頼したことが26日、分かった。

 それが事実であれば、詳しい説明が必要だ。

 聖火リレーの変更が相次ぐ中、一般市民からは開催を困難視する声が広がっている。オリンピックのためにコロナ対策を犠牲にするなとの声も増えた。もっともな懸念である。

 菅義偉首相は、ここでこそ基本方針と対応策を詳しく説明すべきだ。