日本学術会議の会員候補6人の任命を菅義偉首相が拒否した問題は、半年余り経過した今も解決していない。

 学術会議は先週開いた総会で、拒否された会員候補6人を「即時任命するよう要求する」との声明をまとめ、政府へ提出した。

 これまでも再三、6人の任命と拒否理由の詳しい説明を求めてきたが、政府は応じていない。今回、総会の声明という形を取ったのは「強い意思の表出」という。

 学術会議は法定会員数を満たせないままでいる。声明は、菅首相の説明が一切なく「会議の独立性を侵す可能性がある」との見解を示している。

 そもそも日本学術会議法は、会議の推薦に基づき首相が会員を任命すると定める。任命拒否には法律家団体から違法性が指摘されている。

 異常事態をこれ以上放置してはならない。菅首相は声明を重く受け止め、直ちに6人を任命すべきである。

 この問題に対する政府の姿勢は不誠実だ。

 当初、菅首相は「総合的、俯(ふ)瞰(かん)的」に判断した、と漠然とした釈明に終始した。その後は「多様性を念頭に判断した」と主張したが、6人の中には元々少ない女性も含まれており矛盾している。

 拒否された6人は、理由を明らかにするよう内閣府に情報開示請求した。杉田和博官房副長官らが内部で協議した際の文書を対象としている。

 自らの情報を請求する「自己情報開示請求」であり、個人情報は開示を拒む理由にならない。速やかに開示すべきだ。

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 総会では、学術会議の在り方についての報告書もまとめた。国の特別の機関である今の組織形態が役割を果たすのにふさわしく「変更する積極的理由を見いだすことは困難」とする内容だ。

 公的地位や安定した財政基盤、活動面での政府からの独立、会員選考の自主性・独立性など、国を代表するアカデミーの要件を検討した結果、導き出した結論だという。

 組織の在り方を巡っては、菅首相が突然見直しを打ち出し、自民党のプロジェクトチームは、政府から独立した法人格に移行させるのが望ましい、との提言をまとめた。

 今回の報告書に対して自民党から「改革に消極的」と批判の声がある。だが、報告書には今後も検討を続けると記され、情報発信力の強化など目指すべき方向性も示している。組織の改革は任命拒否問題と切り離して時間をかけて議論すべきだ。

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 学術会議は科学者が戦争に協力した過去を反省して設立された経緯がある。元会員の97歳の男性は、気象学者として自らも軍に協力した自責の念から、任命拒否の撤回を求める署名を募り、約6万1千人分を内閣府に提出した。

 国を代表するアカデミーは、政権への批判を含めて専門的な見地から見解を示す役割がある。社会が一丸となって感染拡大防止に取り組まなければならないコロナ禍の今こそ、学術会議の重要性は増している。

 政府には学術会議が役割を発揮しやすい環境づくりにこそ力を入れてもらいたい。