政府の入管難民法改定案に対し、国内外の批判が強まっている。

 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、政府案に「非常に重大な懸念」を示し全面的見直しを求めた。国際的な人権の基準を満たさないとする国連人権理事会特別報告者の指摘や、弁護士会、外国人支援団体などからも反対の声が上がる。

 最も批判が強いのは、難民認定申請中は強制送還されない規定を改め、同じ理由で3回以上申請した場合などに送還できるとするものだ。これを拒否すれば処罰される。

 難民条約は難民の生命や自由が脅かされる恐れのある地域への追放を禁止する。一方で日本の難民認定は昨年47人、申請の1%と他の先進国と比べ極めて厳しい。何回も申請を繰り返し、裁判を経てようやく認められる場合が少なくない。改定案はそうした難民を申請回数で一律に迫害地に送り返す危険がある。

 政府は改定の目的を、難民認定制度乱用と入管施設への収容長期化を防ぐためとする。2019年末時点で退去命令を受け収容中の942人のうち収容6カ月以上は462人、3年以上も63人いた。長期の収容は刑罰と大差なく改善は差し迫った課題だ。

 しかし政府案では、収容期間短縮を難民の「犠牲」で実現することになりかねない。目的と手段に齟齬(そご)がある。

 政府は改定案の今国会での成立を目指すという。だが問題のある法案の成立を急ぐ必要はない。この機に入管行政全体のあり方を含め見直し、内外の批判に応えるべきだ。

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 入管収容施設内の外国人の処遇にも批判が集まる。名古屋では3月、留学中に学費を払えず在留資格を失って収容中の30代のスリランカ人女性が、体調不良を訴え死亡した。支援団体は入院を求め、医師も仮放免を勧めたが、最後まで仮放免されなかった。

 2月には東京の収容施設で新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生。施設内の医療や人権状況が懸念される状態だ。

 改定案では入所者の処遇に関する規定を新設し、拘置中の刑事被告人に準じた扱いにする。娯楽へのアクセスなども含め、収容中の待遇改善に一定の期待はできる。

 半面、支援者らが監督することを条件に新設される「監理措置」の場合を除き、不法滞在などは原則全員収容される。不必要な収容が多発し、かえって長期化しかねない。収容のあり方についても十分議論しなければならない。

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 立憲民主党など野党は、政府案への対案として、難民申請中のほか提訴が可能な期間は強制送還を停止し、収容は最長6カ月で逃亡の恐れがある場合に限定することなどを提案している。十分検討に値する。

 司法のような第三者の関与がほとんどなく、透明性の低い現行の出入国管理制度には人権上問題が多い。課題と指摘され続けている事前の司法審査導入や収容期間の上限設定は政府案でも見送られたままだ。抜本的な修正が行われない限り、廃案にして仕切り直す必要がある。