海外市場の開拓が不十分

 ならば、質の高い原作があふれる日本でも、海外で大ブレイクを果たす邦画・ドラマがあってもいいはずだが、今のところそのような話はほとんど耳にしない。実はそれも当然で、経済産業省が19年6月に映画産業の実態・全体像を把握する目的で調査した「映画制作の未来のための検討会 報告書」によれば、日本の映画産業におけるビジネス環境の課題として「海外市場の開拓が不十分」とハッキリと書かれている。

 つまり、日本の邦画やドラマが海外でパッとしないのは、役者や制作者の技量・努力不足などではなく、アニメやマンガが「ジャパニメーション」なんて呼ばれた30年以上前から海外で着々と市場を拡大していったのとは対照的に、「市場開拓」さえままならないほど「海外進出が遅れている」といった構造的な問題によるところが大きいというわけだ。

『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』主な海外地域における公開実績(出典:アニプレックス)

 では、なぜアニメやマンガと比べてこんな「差」がついてしまったのか。専門家などは「国のクールジャパン事業が悪い」「日本の映画業界は閉鎖的で積極的に海外で勝負するようなカルチャーがない」などいろいろ分析をされている。確かにそういう側面があることは否定しないが、根本的なところを突き詰めていくと、個人的には「民放キー局の罪が重い」という結論にならざるを得ないと思っている。

 皆さんも全国で封切りするような邦画をご覧になると、制作のクレジットに必ず大手広告代理店とともに、日本テレビやフジテレビなど全国キー局が加わっていることに気付くはずだ。また、ドラマに関しても同様で、制作はもちろんのこと著作権もガッツリと民放キー局が握っている。

 つまり、日本の邦画・ドラマの制作は「民放キー局」がガッツリと関わって取り仕切っているパターンが多いのだ。

 「それの何が悪いんだよ?」と思うかもしれないが、このようなビジネスモデルは、もし本当に世界中の人々を驚かせ、心を打つような映像作品をつくろうと思ったとき、「百害あって一利なし」でマイナスに働くことは間違いない。

 ちょっと前にあった、菅義偉首相長男の総務省官僚接待問題に、テレビ局がやたらと歯切れが悪かったことからも分かるように、日本のキー局はお上の庇護(ひご)の下、新規参入や自由競争が排除された「電波ムラ」のなかで「ぬるい商売をさせていただいている」という政商的側面がある。

 「熾烈(しれつ)な視聴率競争」うんぬんというのも結局のところ、電波を独占している仲間同士でプロレスをやっているだけなので、ボロ負けしても「倒産」や「廃業」につながるようなガチンコの競争ではない。

 要するに、民放キー局というのは、一般の民間企業と比べものにならないほど甘やかされた環境のなかで、国に与えられた既得権益をしゃぶる殿様商売的なビジネスモデルなのだ。