深まる疑念に応える貴重な資料になるだろう。国はすべての情報を開示し、説明責任を果たすべきだ。

 森友学園への国有地売却を巡る公文書の改ざんを強いられ、自殺した財務省近畿財務局元職員の赤木俊夫さんが、改ざんの過程を詳細に書き残したとされる文書「赤木ファイル」の存在を国がようやく認めた。

 赤木さんの妻雅子さんが国などに損害賠償を求めた訴訟で、国側がファイルの存在を認める意見書を提出したのだ。

 国はこれまで「裁判に関係せず、答える必要がない」と、文書の存否さえ明らかにしてこなかった。他方、国会では、訴訟に影響することを理由に答弁を回避してきた。

 赤木ファイルには、改ざんが時系列にまとめられた文書、財務省理財局と近畿財務局の間で送受信されたメールや添付資料が含まれる。

 元上司が「われわれがどういう過程で(改ざんを)やったかというのが全部分かる」と語ったほど、詳細な記録とみられる。

 そうした資料があったにもかかわらず、1年以上、存否さえ明らかにしない政府や財務省の姿勢は、自己保身のため、不都合な真実を隠す「隠蔽(いんぺい)体質」そのものと言っていい。

 国は第三者の個人情報が含まれているとして、マスキング(黒塗り)して公開する考えだ。個人情報を盾に恣意(しい)的に情報が隠されれば、これまでと同じだ。

 全面開示が当然である。

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 そもそも、森友問題はいまだに疑念だらけで、あいまいな部分が多い。

 大阪の国有地がおよそ8億円値引きされ、森友学園に売却された。開校予定の小学校の名誉校長に安倍晋三前首相の夫人、昭恵氏が一時就任しており、昭恵氏の関与や官僚の忖度(そんたく)疑惑が浮上した。

 安倍氏が国会で「私や妻が関係していたら総理大臣も国会議員も辞める」と発言した後、取引に関する決裁文書が財務省によって改ざんされた事実が明らかになった。

 改ざん時に理財局長だった佐川宣寿氏をはじめ、財務省幹部ら38人が起訴されたが、不起訴となった。

 財務省は「佐川氏が改ざんを主導した」とする調査報告書を公表し、収束を図った。

 しかし、なぜ国有地が8億円も値引きされたのか、改ざんの動機は何だったのか、指示系統はどうなっていたのか、問題の核心に触れる事実は明らかになっていない。

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 元上司は「赤木さんは涙を流しながら、(改ざんに)抵抗していた」と語っている。

 当事者が命を懸けて内部告発したファイルだ。国民は当然、内容を知りたい。

 再調査を求め、35万筆以上の署名が提出されたが、政府は応じていない。

 財務省の監督責任者として、菅義偉首相は今こそ、再調査を指示するべきだ。

 政府は訴訟を理由に国会でも野党の開示要求に応えていない。国民の代表である国会議員にファイルを開示した上で、質問に答え、全容を明らかにするべきだ。