社説

社説[コロナと五輪]この状況での開催なぜ

2021年5月10日 05:00

 政府の新型コロナウイルス感染症対策に対し、各方面から批判や不満が噴出している。

 菅義偉首相の口から国民に安心感を与えるような明確なメッセージは発信されず、逆に前言撤回を繰り返し、見通しの甘さをさらけ出す始末。

 4都府県に発令した緊急事態宣言は今月31日まで延長せざるを得なくなった。さらに2県を追加するなど対象も拡大された。だが、この方針もちぐはぐだ。

 宣言延長後、百貨店など大型商業施設への休業要請はせず、原則無観客だった大規模イベントも5千人を上限に入場を認める。

 宣言は延長するのに対策の内容は緩めるというのは、いかにも中途半端である。

 新型コロナの変異株が急速に広がる中、政府が予定通りの実施を強調する東京五輪の開幕まで80日を切った。

 しかし、逆風は強まる一方。ここへ来て国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長の来日が見送られることになり、懐疑的な世論に拍車が掛かる。

 中止への賛同を求める国内の署名活動は開始から4日で30万筆を超えた。米紙ワシントン・ポストや英紙タイムズなども否定的な論調で報じ始めた。

 医療従事者確保に向けた大会組織委員会の動きも世論の反発を招いている。

 「人類がコロナに打ち勝った証し」どころか、へたをすると、平和の祭典であるはずの五輪が分断と対立を生みかねない状況なのだ。 

■    ■

 コロナ対策の迷走ぶりは、五輪の歓迎ムードを完全に吹き飛ばしてしまった。

 聖火リレーは変則的な実施を迫られ、海外からの観客受け入れ断念に続いて、本番の無観客開催も現実味を帯びてきた。

 無観客五輪にどのような意味があるのか。そうまでして強行実施する必要があるのか。

 五輪のためにコロナ対策を犠牲にするようなことがあってはならない。

 新型コロナの感染拡大を抑え、五輪を成功させた上で解散総選挙に打って出る。それが首相周辺のシナリオだったはずだが、トンネルのその先が見えなくなった。

 菅首相は、緊急事態宣言の期限が切れる31日の前に、五輪の開催について明確な最終方針を示し、その理由を国民に明らかにすべきである。

 選手たちをこれ以上、「中ぶらりん」状態においてはならない。

■    ■

 菅首相はコロナ対策と五輪と解散総選挙が複雑にからんだ現在の状況に焦りを強めているはずである。

 「安倍1強」という言葉をもじって、「菅一存」と呼ばれる政治手法は、空回りが目立つ。政治手法そのものをあらためない限り、この未曽有の難局を乗り切るのは難しい。

 これまで菅首相は、五輪に関する記者の質問に対しては無視するか適当にあしらうことが多かった。首相としての説明能力に疑問符がついていることを真剣に受け止めた方がいい。

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