[森どぅ宝 世界自然遺産へ](1)

世界自然遺産候補地の緩衝地帯でドリフト走行する2台の乗用車=5月5日午前0時過ぎ、国頭村辺野喜ダム周辺

ドリフト走行があった約5時間後、タイヤ痕の残る道路脇からヤンバルクイナ(中央上)が茂みに入っていった=5日午前7時半ごろ、沖縄県国頭村辺野喜※スマホアプリで画質加工したものです

道路のタイヤ痕は、減速を促すハンプ(こぶ)の上にも残されていた=5日午前7時40分ごろ、沖縄県国頭村

世界自然遺産候補地の緩衝地帯でドリフト走行する2台の乗用車=5月5日午前0時過ぎ、国頭村辺野喜ダム周辺 ドリフト走行があった約5時間後、タイヤ痕の残る道路脇からヤンバルクイナ(中央上)が茂みに入っていった=5日午前7時半ごろ、沖縄県国頭村辺野喜※スマホアプリで画質加工したものです 道路のタイヤ痕は、減速を促すハンプ(こぶ)の上にも残されていた=5日午前7時40分ごろ、沖縄県国頭村

 静まり返った、深夜のやんばるの森。片側1車線の林道に突然、2台の乗用車が現れた。タイヤを滑らせながら、「キイー」とけたたましい音をまき散らす。国頭村の世界自然遺産候補地の緩衝地帯で5日午前0時すぎから約2時間、2台はドリフト走行を繰り返した。辺りが明るくなった午前7時半、現場に残された黒いタイヤ痕の上をヤンバルクイナが歩いていた。この場所でのドリフト走行は20年以上続いているという。識者は「生態系を変える一つの要因になり得る」と懸念する。(北部報道部・西倉悟朗)

 ドリフト走行があったのは、世界自然遺産候補地の緩衝地帯に当たる国頭村辺野喜ダム周辺。カーブの多い村道を午前0時~同2時10分ごろまで、セダンタイプの乗用車2台が何度も繰り返した。

 数時間後、夜が明けた現場にはタイヤ痕が幾重にも重なっていた。午前7時半ごろ、キョロキョロと辺りの様子をうかがいながら、つがいのヤンバルクイナが現れた。タイヤ痕の残る道路を少し歩き、茂みの中に入っていった。

 付近では4月29日午前にも、国天然記念物のリュウキュウヤマガメや準絶滅危惧種のシリケンイモリが道路を横断していた。

 沖縄の動物の生態に詳しい琉球大学の小林峻助教(動物生態学)によると、この辺りは天然記念物のケナガネズミやイボイモリなど、夜間にも行動するさまざまな希少種が生息する。

 小林助教は「“ロードキル”がいつ起きてもおかしくない。騒音や振動で休息できずに生息域を変えてしまうことや、鳴き声が遮られ繁殖を妨害する可能性がある」と懸念する。世界自然遺産に登録されれば交通量も増えるとして「不要な騒音や、光を照射するような走行はやめるべきだ。『ここが特別な場所』という意識を一人一人が持つことが大切」と強調した。

 今回の勧告では、希少種の交通事故死を防ぐ取り組みの強化が求められた。村は勧告前の今年4月下旬、希少生物保護などのため、村道にソフトポールとハンプ(減速させるためのこぶ)を設置した。

 5日深夜、2台の車はポールが設置されている場所ではドリフトせずに走行していた。だが夜が明けて確認したタイヤ痕はハンプの上にも残されていた。