家の中で居ることの多いリビング。本を読んだり、横になったり、ボーッとしたり。それを大自然の中でやってみるのはどうだろう?名護市源河の森の中にあるツリーハウスを紹介。自然をリビングにしちゃおう!
森

名護市源河の山奥にSNSで話題のツリーハウスがある。(株)ツリーフル代表取締役の菊川曉さんが、ここの大アカギに「ほれ込んで」土地を購入し、2013年から計画をスタート。6人のスタッフでツリーハウス3棟と、オープンスペースなどを建築した。地上の宿泊コテージの付帯施設として、ことし6月下旬から開業予定だ。(東江菜穂)
木と一体になる
全方位 緑に囲まれる
大きなアカギの上に建つ「スパイラルツリーハウス」=表紙、写真6。地上から床部まで約10メートルあり、一般的な3階建てくらいの高さにあたる。「トム・ソーヤーの冒険」を思い起こさせる外観は、見ているだけでワクワクする。
らせん階段を上り、室内に入るとさらに圧巻。360度どころか上も下も全方位が森。緑の中に浮いているような感覚だ。
木の上に建ち、自然と一体となれるのがツリーハウスの魅力。アメリカやヨーロッパでは建築が盛んで、プロのツリーハウスビルダーがいて、専用の建材も販売されている。㈱ツリーフルの菊川曉さんは、海外のツリーハウスを巡ったり、プロビルダーの本や動画を見て作り方を学んだ。
「日本にもツリーハウスはあるが、うちで手掛けるハウスは、土地と接する柱がない。つまり100パーセント、木(ホストツリー)に支えられている」と話す。
ツリーハウス専用のボルトを幹に打ち込んで荷重を支える=3=ほか、専用ベルトを上部の幹に複数取り付けて建物をつっている=2。
だからこそ「ホストツリー探しは時間がかかった。建物を支えられるほど立派な木は、山奥にしかない。あちこち探し回って名護市源河でこのアカギに出合った。周りの木も、足元を流れる清流も良い。ここだ! と思った」
土地を購入して、(株)ツリーフルを設立。6人のメンバーで設計・施工を手掛ける。
「安全性が最も大切。何重にも策を施している」。例えば施設内の階段は3本の柱で踏み板を支える=4。「1本が壊れて、さらにもう1本が壊れてしまっても安全が保てる。NASAが掲げる安全基準である『1fail operative 2fail safe(一つ故障が起きても性能を継続、二つの故障が起きても安全を保つ)』を意識して設計、施工している」。
土を占領しない
動植物の邪魔をしない
先の「スパイラル―」に続き、昨年には「トロフィー」というツリーハウスも完成した=8。「日本の伝統的な鼓構造をモチーフにした」。室内は畳敷きで、茶室のようだ=10。ロフト部が寝室になっている。「スパイラル―」も「トロフィー」も、簡易トイレやエアコンを備えている。
9本の木にまたがるオープンスペースも作った=11。
なぜ、それほどまで「木の上」にこだわるのか。「今はもう、人間のために木を伐採する時代ではない。土地を占領するのも違う。自然と共生できる新たな空間を提案したかった」
地上の宿泊施設「エアロハウス」も高床式で、地面から最大3.5メートル浮いている=7。設計は東京の建築家・村井正さんが手掛けた。シンプルな箱型で、移動させることも可能だ。
オープンスペースも含め、「構造物は地面から1.2メートル以上、離すようにしている。建物の下に草が生え、野生動物が通る道を残したい」と菊川さん。自然に対する姿勢に共感し、BEGINの島袋優さんもツリーフルの株主に名を連ね、背中を押す。
コンセプトは「サステイナブル(持続可能)なリゾート。石油、石炭、ガスなどの化石燃料を使わずに電気を使用。使用量よりも多く太陽光で発電し、持続可能な社会を構築する」と熱を込めて語る菊川さん。
自然と人、どちらか我慢するのではなく「気持ちよく共存するのがベスト。それを、源河から世界へ発信したい」と話した。
インフォメーション
各施設の見学、宿泊を含め開業は6月下旬の予定。オープニング情報は(株)ツリーフルのホームページなどで確認を
住所/沖縄県名護市源河2578
HP https://treeful.net/
インスタ @treeful.treehouse
※「週刊タイムス住宅新聞」第1843号(2021年4月30日発行)紙面から転載