社説

社説[高齢者ワクチン接種]「担い手」確保に全力を

2021年5月13日 08:32

 65歳以上の高齢者を対象とした新型コロナウイルスのワクチン接種が本格化している。事業が大きく動きだす一方で、電話が殺到し「つながらない」「予約が取れない」といった苦情も相次ぐ。通信制限がとられるなど接種の入り口での混乱が、後々まで響かないか心配だ。

 重症化リスクの高い高齢者へのワクチン接種は先月12日に始まった。当初は供給が少なかったため、高齢者施設の入所者らに限られていた。今週以降、大量配送される予定で、政府は6月末までに全高齢者3600万人分の配布を終えたいとしている。

 自治体から接種券が届いたら、日時と場所を確認した上で、電話やインターネットで予約する仕組みが一般的だ。

 ただ先着順にした自治体では短時間で枠がいっぱいとなり、予約できなかった高齢者が窓口に殺到するという騒ぎもあった。

 ネットやスマホに不慣れなお年寄りからは、「操作が難しい」といった戸惑いの声ももれている。

 電話の殺到で緊急通報などがつながりにくくなったため、NTTなどは一部地域で電話発信を制限するという異例の対応をとった。

 準備不足は否めない。

 高齢者への接種開始から1カ月の時点で、少なくとも1回接種した人は対象者の1%にも満たない。

 一日中電話をかけ続け疲れ切った表情をニュースで見て、もっと早く、もっと簡単にできないものか心が痛んだ。混乱にうんざりし、接種自体を断念する人もいるのではないか、危惧される。

■    ■

 菅義偉首相は先月23日の記者会見で「7月末をめどに高齢者の2回接種を終えたい」と明言した。

 しかし、総務、厚生労働両省の調査で、7月末で終えると回答とした市区町村は全体の86%。都道府県内の全市区町村が終えるとしたのは17府県にとどまった。緊急事態宣言が延長された東京や大阪、まん延防止等重点措置が続く沖縄などは含まれていない。

 全国知事会が「医療従事者の不足」「通常診療への支障」「自治体のマンパワー不足」などを課題に挙げている通り、今のままではたとえワクチンが届いても接種日程は立てにくい。

 首相発言で計画の前倒しを余儀なくされた自治体もある。先頭に立って号令をかける以上、潜在看護師の掘り起こしなど医療従事者の確保に必要な対策をしっかりととるべきだ。

■    ■

 大勢の高齢者が必死で電話をかけている中、ワクチン接種で便宜を図り行政の公平性に対する信頼を揺るがす問題も発生している。愛知県西尾市が、薬局大手会長夫妻の予約を優先的に確保していたのだ。

 優先的な扱いを受けようとする人がいる一方、気になるのは1人暮らしで、頼る人がいない高齢者だ。

 自治体の中には予約のネット手続きを若者らがサポートするところもある。介護関係者はもちろん隣近所の積極的な声掛けで希望者が接種につながる支援を強めたい。

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