宮古島市上野野原に整備された陸上自衛隊駐屯地の用地取得を巡り、下地敏彦前市長が収賄の疑いで県警に逮捕された。

 建設地となったゴルフ場「千代田カントリークラブ(CC)」の土地約22ヘクタールを国に売却できるよう地権者に便宜を図り、見返りとして現金約650万円を受け取った、とする容疑である。

 当時ゴルフ場経営者だった会社役員も贈賄の疑いで逮捕された。

 県警は2人の認否を明らかにしていない。ただ、前市長は1月まで3期にわたり市長を務めた保守系のベテラン政治家だ。職務に関し現金を受け取っていたことが事実なら政治家としての倫理観の欠如は甚だしい。行政への信頼を損ねる許し難い行為である。

 宮古島が陸自配備の有力候補地だと防衛省から市に伝えられたのは2014年6月。翌年、市北部にある大福牧場と中央部の千代田CCの2カ所が候補地として示された。

 前市長は16年6月の市議会で配備受け入れを正式に表明した。同時に大福牧場については地下水源の保護を理由に施設建設を「認めない」と防衛省に伝達したと答弁した。

 一方で受け入れ表明の1年以上前に、前市長が防衛省へ「千代田CCを中心に事業を進めてほしい」などとする働き掛けを3回にわたりしていたことが明らかになった。

 最終的には千代田CCに決まり駐屯地が整備された。陸自トップの吉田圭秀陸上幕僚長は13日の記者会見で「用地取得は適正な手続きを踏んだ」と説明した。だが、用地選定に疑義が生じている。前市長とのやりとりを改めて検証すべきだ。

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 大福牧場近くには市内最大の地下水取水地があることから、市議会の与党議員も配備計画に反対を表明していた。それらを理由に前市長が認めない考えを明確に示した。

 千代田CCについても地域住民から反対の声が上がっていた。隣接する野原部落会や千代田部落会はそれぞれ配備反対の決議を可決し、前市長に中止への協力を求めていた。地元の反対は強かったのにどうしてこちらは押し進めたのか。

 逮捕された2人は「宮古地区自衛隊協力会」の会員という共通点があった。前市長は名誉職である特別会員、会社役員は事務局長や副会長を歴任したという。

 千代田CCは経営状況が厳しく多額の赤字を出していたことが分かっているが、それでもなぜ現金のやりとりがあったのか。徹底した捜査を求めたい。

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 陸自の宮古島駐屯地は19年3月に開設された。保良鉱山地区に建設されていた訓練場の利用も始まった。存在感を増す自衛隊に、有事の際に施設が標的にされると不安視する市民もいる。

 前市長が逮捕されるという異常事態は、市民に大きな衝撃を与えている。

 市は行政の公平性がゆがめられることがなかったかを調べ、市民に丁寧に知らせる責任がある。市議会も現在に至るまでの経緯を再検証すべきだ。