競技へ打ち込む女性アスリートを冒涜(ぼうとく)する卑劣な行為が摘発された。

 テレビ番組に映った女性アスリートの競技画像39点をアダルトサイトに無断転載したとして、サイト運営者の男が著作権法違反疑いで警視庁に逮捕された。テレビ局を被害者として立件した。

 男はサイトに「アスリート」という専用項目を設け、番組から切り出した画像に性的なコメントをつけて掲載した疑いが持たれている。閲覧数を稼いで広告収入を増やす狙いだったとみられる。

 競技会場で体の一部分をアップにした写真や動画が無断で撮影されたり、その画像が性的な言葉とともにインターネットで拡散されたりする被害は20年ほど前から横行している。

 報道された競技写真に性的な加工をして本人のSNSに送りつける事例もある。

 競技への集中が妨げられるばかりでなく、精神的な苦痛から引退を考える人もいるという。深刻な事態だ。

 昨年11月、日本オリンピック委員会(JOC)などスポーツ7団体が被害撲滅に取り組む共同声明を発表した。被害を「アスリートへの写真・動画による性的ハラスメント」と位置付け、毅然(きぜん)とした態度を示した意味は大きい。

 対策の一環として設置した情報提供窓口には、半年間で約千件の情報が寄せられた。逮捕された男のサイトもその中に含まれていたという。立件が悪質行為への歯止めとなることを期待したい。

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 各競技団体は大会で観客による写真撮影を禁止したり、許可制にしたり、会場内で見回りをするなど、これまでも自衛策に取り組んできた。

 それでも被害はなくならない。共同通信が競技団体を対象に実施したアンケートでは、「撮影目的や撮影者の見極めが困難」など対策の難しさが浮き彫りになった。

 盗撮行為は刑法では規定されておらず、都道府県ごとに迷惑防止条例で取り締まっているのが現状だ。ユニホーム姿の選手を盗撮すること自体を罪に問うのは難しい、との見方もある。

 名誉毀(き)損(そん)罪に問うには選手が事情聴取を受ける手続きが必要で競技に集中できなくなる懸念がある。泣き寝入りせざるを得ない状況だ。

 被害防止のため観客の撮影規制を厳格化するとともに「盗撮罪」の法整備も含めて議論を深めるべきだ。ネット事業者に画像の削除要請手続きが簡略化できる、被害者救済の仕組みも求めたい。

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 JOCが動いたきっかけは昨年8月、日本陸連のアスリート委員会に選手が相談したことだ。問題が表面化し他競技からも声が上がった。

 ただ、公表した選手に対し「露出が多いユニホームを着るから」との反応が寄せられた。ユニホームには競技性の向上が考慮されている。被害者に落ち度があるとするのは見当外れな指摘だ。

 被害は中高生や男子選手、チアリーダーらにも及んでいる。競技団体には、選手への啓発や相談窓口の周知を図り、安心してスポーツに打ち込める環境を守ってほしい。