初々しく結婚写真に納まった2人は時がたち、たくさんの子や孫に囲まれ笑顔を浮かべている。「地域に根差し、家族の歴史の一こまを残す。長く続けてきたからこそ感じられる醍(だい)醐味(ごみ)がありますよね」。訪れる客の7割が那覇市民だという同市若狭の波之上写真館。一張羅に身を包んだ人々のさまざまな記念写真を眺めながら、経営者の大城実さん(60)が胸を張る。7年前に82歳で亡くなった父勝一さんが波之上通りで創業して今年で65年。齢100年を重ねた那覇で、移ろう街並みをこれからも見続ける。(学芸部・新垣綾子)

西銘順治氏ら著名人や市民の記念写真が並ぶ波之上写真館。「寝る間もないほど働いたね」。経営する大城実さん(左)は、母和子さんが現役だった頃を懐かしんだ=19日、那覇市若狭

波之上写真館創業者の大城勝一さんが撮影した元沖縄県知事の西銘順治氏(左上)や、沖縄社会大衆党委員長などを歴任した安里積千代氏と妻(左下)の写真などが並ぶ

沖縄県議会議員や国会議員を務めた政治家たちの写真もある

西銘順治氏ら著名人や市民の記念写真が並ぶ波之上写真館。「寝る間もないほど働いたね」。経営する大城実さん(左)は、母和子さんが現役だった頃を懐かしんだ=19日、那覇市若狭 波之上写真館創業者の大城勝一さんが撮影した元沖縄県知事の西銘順治氏(左上)や、沖縄社会大衆党委員長などを歴任した安里積千代氏と妻(左下)の写真などが並ぶ 沖縄県議会議員や国会議員を務めた政治家たちの写真もある

 通りがひときわにぎわったのは1960~80年代だと、大城さんは思い返す。写真館の近くにある波上宮は挙式のメッカであり、観光スポット。周辺には複数の写真館が建ち並び、親族で切り盛りしていた勝一さんたちも若いカップルや団体旅行客の撮影で大忙しだった。大城さんの母和子さん(89)は本格的に美容や着付けを学び、勝一さんをサポート。「自分が作った(着付けをした)花嫁さんがきれいに写っているのを見ると『ああ、この仕事で良かった』としみじみ思ったねえ」と語る。那覇市長や知事を歴任した西銘順治氏の肖像写真は、西銘氏本人もお気に入りだったという。

 時代は流れ、ホテルウエディングや大手フォトスタジオの台頭などで、通りから活気が奪われていく中、大城さんが父、兄と続いた経営のバトンを引き継いだのは10年ほど前だ。近年、若狭に大型クルーズ船バースが整備され、通りに足を運ぶ外国人観光客が増加。休眠状態にあった通り会が再始動するなど明るい兆しもあったが、新型コロナウイルスの感染拡大が写真館に、地域に再び大きな打撃を与えた。

 「今は我慢の時ですね」と大城さんは言う。初詣、七五三、なんみん祭。多くの市民で盛り上がる恒例行事を挙げ「生まれ育った那覇の街は私の誇り。コロナの感染が収まったら少しでもにぎわいを取り戻せるよう、私にできることで貢献したい」と前を見据えた。