自衛隊が運営する新型コロナウイルスワクチン大規模接種センターの予約システムに見つかった欠陥の報道を巡り、防衛省が朝日新聞出版と毎日新聞だけに抗議し、同じ内容を報じた日経BPには抗議していないことが25日までに分かった。岸信夫防衛相も2社だけを「極めて悪質」と繰り返し名指ししている。

防衛省

 3社は17日、ネット媒体で、適当な接種券番号や対象外となる65歳未満の生年月日で予約が取れたと報じた。朝日と毎日は予約を取り消したと記事に明記、取材と報道は公益目的だったと説明している。

 翌18日、岸氏は会見やツイッターでこの2社を取り上げて批判し、実兄の安倍晋三前首相も2社を「妨害愉快犯」とツイートした。防衛省は同日、官房長名の抗議文を2社に郵送した。

 日経BPを抗議対象から除いた事実や理由について、防衛省は本紙取材に「確認中」として回答しなかった。日経BPが「抗議はない」と説明した。

 25日の参院外交防衛委員会で、防衛省の担当者はシステム設計の段階から架空情報で接種予約ができると知っていたことを認めた。2社が取材で予約した行為が実際に高齢者の予約を妨害したかについては「細部は把握していない」と述べた。(編集委員・阿部岳

■メディア攻撃はお門違い

 中野晃一上智大学教授(政治学)の話 ワクチン接種の遅れは大失政だ。焦った菅義偉首相は大規模接種を始めたが、むちゃを押し付けられた防衛省がやっつけ仕事でお粗末な予約システムをつくってしまった。安倍晋三前首相、岸信夫防衛相の兄弟がメディアを攻撃するのはお門違いの「逆ギレ」だ。攻撃は最大の防御だと考えているのだろう。

 犬にだけ聞こえる音を出す「犬笛」のように、政治家が支持者に向けて標的を名指しし、攻撃をけしかけるメッセージを出している。日経ではなく、比較的リベラルとされる朝日や毎日を標的にすることで、ネトウヨと呼ばれる人たちが群がっている。

 攻撃を重ねることで、メディアを萎縮させられることを彼らは知っている。今回も公益性のある報道なのに、政治家がここまで強気に出られるほどメディアが弱体化していることを実感した。ジャーナリストが連帯し、ひるまずに、報道の自由を行使していくしかない。