この国は、住民の命と健康を犠牲にしてまで、米国への従属を続けるつもりなのか。

 米軍嘉手納基地周辺の河川から有機フッ素化合物PFAS(ピーファス)が高濃度で検出されている問題で、県企業局が求めている基地内立ち入り調査に関する日米合同委員会の議事録を、外務省が不開示にした。「国の安全が害される恐れ、米国との信頼関係が損なわれる恐れがある」ことが理由という。

 琉球朝日放送(QAB)の島袋夏子ディレクターが開示請求していた。

 PFASは発がん性が指摘され、体内に長く残留する。住民の命や健康よりも優先されるような「国の安全が害される恐れ」とは何か。具体的に示さず、「非公表が前提」という理由は、説得力を持たない。

 米軍基地が発生源である可能性が極めて高いPFASは7市町村45万人分の水源を長年汚染してきた。

 県管理の北谷浄水場でPFASの除去に使う活性炭の切り替え事業には、2019~23年度の5年間で約16億円が使われる。国が基地への安定供給という名目で3分の2、残りを県企業局が負担する。米軍による環境汚染の尻ぬぐいは、最終的に水道料金として県民負担となる。形を変えた基地負担にほかならない。

 日米合同委員会では、これまで国会審議を経ない合意議事録によって地位協定以上の権限を米側に認めてきた。

 立ち入りを認めないというなら政府は、その理由をきちんと説明するべきだ。

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 環境省の19年度調査で、PFASの一種、PFOS(ピーホス)の値が最も高かったのは嘉手納基地内外を流れる沖縄市の大工廻川。1リットル当たり1462ナノグラムが検出された。国の指針値50ナノグラムの約30倍で全国最悪の数値である。

 PFOSは長年、泡消火剤などに使われてきた。本紙取材で、1970~80年代に嘉手納基地の消火訓練施設が、大工廻川から約50メートルの場所にあり、汚染防止措置はなかったことが明らかになっている。その後も、米軍は周辺の土砂や水質調査をしていない。

 なぜ、こうした状態が放置されてきたのか。

 日米地位協定で米軍に基地の「排他的管理権」が与えられている。環境補足協定の日米合意でも、米側の判断に基づき「環境に影響を及ぼす事故(漏出)が現に発生した場合」と限定することによって、基地内立ち入りを拒める二重のハードルとなっている。

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 県は多くの情報から嘉手納基地を最大の汚染源と見て、2016年以来、立ち入り調査を繰り返し求めてきた。

 米政府は在日米軍基地からのPFOS汚染の原因は認めない一方、ベルギーや韓国の基地などでは認めている。ドイツの消火訓練場跡では土壌と地下水中で高レベルのPFOSが発見された後、浄化に取り組んでいる。

 基地内への自治体の立ち入り権や土地の原状回復義務のない日米地位協定は改定すべきだ。基地周辺の環境汚染・住民の健康被害を防ぐことが、主権国家である日本政府が優先すべき責務である。