LGBTなど性的少数者への理解増進を図る法案は、与野党が合意しながら今国会成立が見通せない不可解な状態になっている。

 超党派の議員連盟が、自民党特命委員会の策定した法案要綱の目的と基本理念に性的少数者への「差別は許されない」との文言を追加することで一致したのは14日。各党の党内手続きが済めば今国会成立は可能とみられていた。

 ところが追加された文言を巡り、自民党内保守派が「行き過ぎた運動や訴訟に発展する」と反発。特命委では国会審議を尽くすとしてようやく了承されたが、27日の党政調審議会も紛糾した。最終的には党総務会で全員一致の了承が必要だ。

 仮に週内に自民党の党内手続きが終わっても、土地規制法案などの審議を優先させる政府・与党方針の下、6月16日の会期末までにLGBT法案の委員会質疑時間を確保することは難しいという。

 「性的指向と性自認の多様性を受け入れる寛容な社会の実現」という法案の目的自体に保守派も異論はなかったはずだ。法案が国や地方自治体に求める理解増進のための施策は努力義務にすぎない。与野党合意で追加された文言も、性的少数者の切望してきた差別禁止規定ではなく、罰則もない。

 強制力を持たなくとも、現実社会で苦しむ当事者にとっては「一歩前進」だ。自民党内には秋までにある衆院選などを念頭に先送りの声もあるというが、政局絡みで差別を放置するのは論外である。

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 性的少数者への理解を欠き傷つける発言が、自民党内の法案検討過程で相次いだ。

 山谷えり子元拉致問題担当相は「体は男だけど自分は女だから女子トイレに入れろとか、女子陸上競技に参加してメダルを取るとか、ばかげたことがいろいろ起きている」と発言した。

 性同一性障害で女性として生きる経済産業省職員が庁舎内トイレの使用制限をしないよう求めた訴訟が念頭にあったようだ。ただ執務場所から遠いトイレに制限はなく誤解を招く。スポーツは問題があれば競技規則で対応すべきで法案とは無関係だ。

 簗和生(やなかずお)元国土交通政務官の性的少数者の存在を「生物学上、種の保存に背く」とした発言は、あまりに差別的だ。子を持つかどうかは個人の生き方に関わる問題で、国が押し付けるものではない。

 逆に、こうした人権感覚が疑われる発言が続くこと自体、法成立の必要性を示している。

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 法案をまとめた超党派議連は、東京五輪・パラリンピック前の成立を目指していた。五輪憲章は「性的指向による差別」を禁じる。

 欧米では2000年代から性的少数者らへの不利益扱いを禁じる法整備が進められており、日本の制度は国際的に大きな後れを取っている。

 同性カップルのパートナーシップ制度を持つ自治体に共同通信が行った調査では、那覇市など59%に当たる51自治体が、性的少数者に関する国内制度が不十分とした。法制化は急務である。