社説

社説[宣言延長] 五輪実施 「安全 安心」の根拠示せ

2021年5月29日 09:00

 政府は、東京や大阪など9都道府県に発令している新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言を6月20日まで延長すると決めた。

 決定後、会見した菅義偉首相は「度重なる延長は心苦しい限り」と理解を求め、五輪開催への反対論には「安全、安心の大会に向けた取り組みを進めている」と述べた。

 しかし約3週間という延長幅についても、解除の要件についても、明確な根拠や基準は示されなかった。

 延長はやむを得ないとしても、国民にさらなる負担を強いる以上、どうすれば日常を取り戻せるのか、収束に向けての出口戦略を示す必要がある。

 長いトンネルの先が見えない一方で、透けて見えたのは「五輪ありき」の政府の危うい姿勢だ。

 7月23日開幕の東京五輪を見据え、その1カ月前まで宣言を維持して、感染を可能な限り抑え込むというシナリオである。

 政府の基本的対処方針は解除の「考え方」として、ステージ4(爆発的感染拡大)からステージ3(感染急増)に抑えることを目安としている。専門家の間では猛威を振るう変異株を考慮し、より厳しくすべきだとの意見が根強い。

 現状は感染者数が高止まりし、病床の逼迫(ひっぱく)が続き、解除基準にはほど遠い。感染者が下がりきらない中で解除し、対策を緩和すれば再度の感染爆発を招きかねない。

 五輪日程に縛られることなく、指標に基づいたリスク分析と評価が必要だ。

■    ■

 重要な局面だけに、菅首相には正確で丁寧な発信が求められる。だがこの日の会見も相変わらずで、国民の疑問に正面から答えようとはしなかった。

 国際オリンピック委員会(IOC)のコーツ調整委員長の緊急事態宣言下でも開催との発言が波紋を広げる中、「宣言下でも五輪を開催できるか」を問われた菅首相は、答えをはぐらかした。具体的開催基準についても明言しなかった。

 圧縮したとはいえ選手を除き8万人近い関係者が来日する大イベントだ。事前のテスト大会ではコロナ対策をまとめた「プレーブック」から逸脱した行為もあった。 

 頼みの綱のワクチン接種も日程に無理があり、スムーズに進むかどうか見通せていない。

 海外の医学誌では日本を中継地にウイルスが拡散する可能性も指摘されている。

 不確定要素が多く、これほどリスクの高い五輪はこれまでなかったのではないか。

■    ■

 IOCの最古参委員からは、「アルマゲドン(最終戦争)でもない限り実施できる」との発言も飛び出している。常軌を逸している。緊急事態宣言下でも実施するという発言といい、五輪で感染が広がった場合、その責任は誰がとるのか。

 菅首相は開催権限はIOCが持ち、政府に決定権はないという。

 しかし感染のリスクを負うのは国民であり、その命より優先されるものはない。

連載・コラム
記事を検索
注目コンテンツ
復帰のエピソードお寄せください
復帰のエピソードお寄せください
日本復帰にまつわる体験や、半世紀を振り返っての思いなどをお寄せください。
SDGs企画「未来へ#いのちを歌おう」
SDGs企画「未来へ#いのちを歌おう」
Kiroro玉城千春さんが沖縄県内の小・中学校を訪ねて、夢、命の尊さを届けます。
不器用トーク・アーカイブ
不器用トーク・アーカイブ
不器用トークのアーカイブページです。毎月1回、まさに今、現場で取材している記者たちが、それぞれのテーマについて熱く語ります。
楽でお得でポイント高し!
楽でお得でポイント高し!
「オール電化」はセイカツをどうカエルのか?護得久栄昇先生がオール電化生活の安心・お得な魅力を探った。
”コトバチカラ”特設サイト
”コトバチカラ”特設サイト
人々を勇気づけるアスリートのコトバを発信している特設サイト
命ぐすい 耳ぐすい
命ぐすい 耳ぐすい
沖縄県医師会の各分野の医師による医療・健康に関するコラム
胃心地いいね
胃心地いいね
沖縄タイムスの各市町村担当の記者が、地域で話題のお店や人気グルメを食べ歩きます。
アクロス沖縄
アクロス沖縄
東京発 各分野で活躍する情熱県人らを紹介
ワールド通信員ネット
ワールド通信員ネット
世界各国の沖縄県系人の話題を中心に、海外通信員が各地のニュースをお届けします
マンガ家大城さとしが行く!沖縄のじょ~と~企業探訪
マンガ家大城さとしが行く!沖縄のじょ~と~企業探訪
おばあタイムスでおなじみのマンガ家・大城さとしさんが長編マンガで沖縄の企業を紹介するシリーズ企画です。